環境マネジメントとは何か

ISO14000ファミリーとは、環境マネジメントシステムを中心として、環境監査、環境パフォーマンス評価、環境ラベル、ライフサイクルアセスメント、マテリアルフローコスト会計など、環境マネジメントを支援する様々な手法に関する規格から構成されている。2015年の改訂では、CSR(Corporate Social Responsibility)の視点が強調されるとともに、経営戦略の中に環境マネジメントの視点を組み込むことが意図されている。

具体的には、下記の各項目について、注目することの重要性が強調されている。

1.世界規模の環境変化を把握し、企業のステークホルダーにとって何が重要かを認識する
2.トップマネジメントの環境マネジメントに対するなお一層の関与を要請する
3.「持続可能な資源の利用」、「気候変動の緩和及び気候変動への適応」、「生物多様性及び生態系の保護」についてコミットメントを高める
4.環境マネジメントの「成果」がより強調される
5.個別企業にとどまらず、サプライチェーン全体の環境マネジメントが求められる
6.社内にとどまらず社外に対しても、信頼できる情報を広報も含めて、円滑なコミュニケーションを心がける

環境マネジメントに関する個別企業の取り組みの総和が、環境に優しい地球社会の構築につながるようにISOファミリーが貢献することが目指されているのである。もっとも、規格には法的な拘束力はなく、規格に沿った取り組みをするかどうかは、企業の自主的な判断に委ねられている。

取得件数減少の本当の原因とは

法的拘束力がないのは、他のISOの規格、代表的には品質管理の規格であるISO9000シリーズも同様である。日本企業は、高い品質を実現できた実績があり、わが国独自に発展させてきた品質マネジメントシステムを有している。

したがって、ISO9000シリーズに依拠した品質管理を行なっているというよりは、認証を取得し、その維持に取り組むことには、他の理由があると思われる。具体的には、認証取得の効果として、1.社会的信用を確保する、2.主として欧米企業との取引条件にISO9000シリーズの認証組織であることが要請される、3.認証取得と維持を通じて組織活性化を図ることがあると言われている。もし、それが事実だとすれば、ISO14000シリーズの認証取得企業の減少をどう理解すればいいのだろうか。

環境への取り組みについての社会的信用は、不要になったのだろうか。海外企業との取引は減少してきているのだろうか。環境マネジメントを通じた組織活性化を放棄したのだろうか。いずれの理由も該当しないように思われる。それでは、本当の理由はどこにあるのだろうか。

考えられる理由の一つは、認証の取得・維持にコストがかかることがある。しかし、大企業であれば、認証の取得・維持のコストは、それほど大きな負担ではないはずだ。コストに関するもう一つの理由は、ISO14000シリーズの維持管理のための部署開設や人員の配置コストが無視できないというものである。確かにこれらのコストは、認証の取得・維持コストをはるかに上回るだろう。しかし、上記3つの効果を考えれば、認証取得・維持に要するコストは必要経費と考えられるので、これまた、主要な理由とは言えないだろう。