容疑を認めなければ保釈されない「人質司法」
「海外からの代表的な批判に、容疑者の勾留期間の長さがある。東京地検特捜部による捜査では、地検が48時間、その後は裁判所の判断で通常20日間、身柄が拘束される。一方、フランスでは警察による勾留は原則24時間にとどまる。だがその後、日本にはない制度である『予審』の段階で最長4年に及ぶ勾留が認められている」
実に分かりやすい解説だ。検察は記者会見でこのように説明すべきだった。いまからでも遅くない。検察庁のホームページなどで情報発信すればいい。もちろん、日本語だけではなく、英語、フランス語、中国語などの解説も必要だ。
日経社説は最後にいわゆる「人質司法」の問題に触れる。
「欧米では捜査側に幅広い通信傍受や司法取引、おとり捜査といった強い権限が与えられている。これに対抗する形で取り調べの際、容疑者に認めているのが弁護士の立ち会いだ。日本では捜査手法は限定して取り調べに比重を置き、弁護士立ち会いを認めずに供述を引き出すやり方を採用してきた」
「そうした手法が、容疑を認めなければ保釈されない『人質司法』へつながるなど負の側面も持っていることは否定できない。ゴーン事件で相次いだ批判を、日本に適したよりよい刑事司法制度を考えるためのきっかけにしたい」
「容疑を認めなければ保釈されない」。なるほどその通りである。ただ日本でもおとり捜査は以前から薬物犯罪捜査で限定的に認められ、司法取引は今回の「ゴーン逮捕」で2回目だ。刑事司法制度自体が、次第に欧米型に近づいてきている。要はその過程でどう被疑者の権利を認めていくかだ。
「刑事司法手続きの見直しが必要だ」と毎日
日経社説を皮切りに新聞各社に検察の対応を求める社説が目立っている。
たとえば毎日新聞の12月11日付の社説は「裏の役員報酬を将来的に支払うことが確定していたのかどうか。そこが最大の焦点になる」と虚偽記載を巡る検察とゴーン前会長の主張の違いを解説した後、最後に刑事司法制度の見直しの必要性を訴えている。
「事件を巡っては、長期にわたる勾留など日本の刑事手続きへの批判がフランスなど海外で起きた」
「勾留期間の長さは、司法制度の違いに起因し、一概に日本が長いとは言えない。ただし、取り調べへの弁護人の立ち会いなど、欧米の先進国で認められていながら、日本では原則的に採用されていない取り組みもある。国際化が進む中で、刑事司法手続きも不断の見直しが必要だ」