世界11カ国で「同じタイミングに同じトラブル」が起きた

今回、このMMEをつかさどるソフトウェアの、さらにその前提である電子証明書(筆者註:執筆時点ではまだ詳細は発表されていないが、おそらくソフトウェアのバージョン管理に関する証明書ではないか)の期限切れが、エリクソンの多くの機器で起きた。

そのため、日本だけでなく、エリクソンの機器を利用する世界11カ国の通信事業者で、同じタイミングに同じトラブルが起きている。なかでも英国O2の障害は深刻で、復旧までにかなりの時間を要したようだ。

そんな深刻な事態が「証明書の期限切れ」という、ありふれた原因で起きた。それはつまり、パソコンやスマホのウェブブラウザで頻発するような現象と同じ理由で、インフラ全体が止まり、社会システムに幅広く影響が及んだ、ということだ。もし本当ならば、われわれはなんと脆弱な社会に生きているのか――。

そんな印象を抱くかもしれないが、実はその通りで、案外われわれの社会は脆くて弱いのである。

金融、ヘルスケア、テレビ放送でも進む「IP化」

なぜ脆くて弱いのか。大きな要因は、われわれの社会がデジタル化(特にIP化)を進めていることに他ならない。IP化とは、インターネット・プロトコルを使ってシステムを構成するということだ。

インターネットの基盤技術は、インターネットそのものだけでなく、通信インフラを含めた多くの産業装置の制御に使われるようになっている。これは日本を含めた世界のメインストリームであって、日本でも金融サービスやヘルスケア、テレビ放送などもIP化が進みつつある。

このIP化は通信インフラでも大きく進み、すでにLTEネットワークはオールIP化を達成している。そしてインフラを支える機器にも、われわれが日頃使っているインターネット機器と同じような、簡便さや効率性がもたらされた。

それはすなわち、われわれが日頃引っかかるようなトラブルと同じような構造で、生活に重要なインフラが躓く時代が訪れたということである。