収益源のアリババが減収→株式売却へ

2022年4~6月期、ソフトバンクグループ(SBG)の最終損益は、3兆1627億円の赤字だった。ビジョンファンドの投資先企業の株価下落が響いた。

記者会見するソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長=2022年8月8日、東京都港区
写真=時事通信フォト
記者会見するソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長=2022年8月8日、東京都港区

株価下落の原因の一つはインフレ退治のために米国の連邦準備制度理事会(FRB)が大幅な追加利上げを余儀なくされていることだ。それによって期待先行で株価が上昇したIT先端銘柄が下落した。世界のIT先端分野ではサブスクリプション型のビジネスモデルの行き詰まりも鮮明だ。

中国経済の失速もあり、世界全体で景気後退懸念が高まっている。そうした要因を背景にSBGが出資してきたIT先端分野の企業の株価が大きく下落した。今後、SBGは一段と厳しい事業環境に直面するだろう。FRBや欧州中央銀行(ECB)はインフレ退治のために大幅の利上げを余儀なくされるだろう。ビジョンファンドなどが保有する株式の追加的な下落リスクは高まっている。

それに加えて、SBGの投資事業を根底から支えた中国のアリババ・グループが共産党政権のより強い締め付けに直面している。4~6月期、アリババは上場来初めて減収に陥った。これを受けてSBGは10日、アリババの株式を使った資金調達の一部をアリババ株で返済すると発表した。調達額は約1兆3000億円に上り、アリババは関連会社ではなくなる。資金調達の源だったアリババの株式売却は、SBGの厳しい経営環境を示している。

株価と共に急拡大、急降下を繰り返している

SBGが計上した3兆1627億円の最終赤字は、4~6月期における本邦企業として過去最大だ。SBGは孫正義会長兼社長の眼力によって企業家の資質を見抜き、人工知能などIT先端分野で高い成長が期待される企業に出資を行う。その上で高値で新規上場株(IPO)を実施して利得を確保してきた。

成功例が中国のアリババだった。同社の業績は世界の株価の変化に大きく影響される。世界的に株価が上昇すると、SBGの業績は拡大する。反対に世界経済の先行き懸念が高まり出資先企業の業績が悪化して株価が下落すると、SBGの業績は急速に悪化する傾向にあった。

例えば、2020年3月23日から2021年11月の半ばまで、世界全体で株価は上昇した。特に、米ナスダック市場などに上場するIT先端企業の株価上昇が鮮明化した。コロナ禍などによって世界経済のデジタル化が加速し、ネット通販企業などの業績が拡大した。FRBなど世界の中央銀行は景気下支えのために超低金利環境と、過剰な流動性供給を実施した。それはIT先端分野の成長期待を一段と押し上げた。