今年5月に「不穏な動き」を察知できた理由

今年に入ってから私が気になっていたのは、ゴーン氏とフランス政府の急接近だ。これは5月に私が書いた記事でも触れたが、ゴーン氏にはフランス政府側に立たなければ、経営者としての延命が危うい状況にあることが感じられた。

本来、ゴーン氏のルノーCEOとしての任期は今年までだった。これが2022年まで延長されることになったわけだが、私は一連の経緯のなかで、ゴーン氏とフランス政府の間で何らかの“密約”があったのではないかと考えている。

ここで見えてくるのが、フランスのマクロン大統領の思惑である。1977年生まれの若き大統領が生まれたと話題を集めたが、私はマクロン大統領の行動や言動から、“ナポレオン的”な思考の持ち主と考えるようになった。本件に関連させると、マクロン大統領には、「世界に冠たる自動車メーカーを作る」ことへの並外れた関心を感じる。

世界の自動車市場を見ると、日本やアメリカ、ドイツのメーカーが1000万台を超す生産台数を有しており、確固たる地位を築いている。いずれ中国も追いついてくる見込みだが、フランスの自動車メーカーであるルノーやプジョーはそこまでは至っていない。

ゴーン氏はフランス政府から日産を守る盾だった

しかしながら、ルノーと日産、さらに三菱自動車を加えると、フォルクスワーゲンやトヨタに肩を並べられる。これがマクロン大統領の描いているシナリオである。彼はフランスの経済相だった当時から、そうしたシナリオを描いていたのだ。

こうしたマクロン大統領の意向に対し、ゴーン氏は拒否をする姿勢を見せていたという。つまり、ゴーン氏はフランス政府から日産を守る盾であったわけだが、最近になってゴーン氏がフランス政府寄りになってきたという報道が目立ち始めるようになった。

そうしたタイミングで、ゴーン氏のルノーCEOとしての任期が2022年まで延長されることになったわけだから、フランス政府との間で、何かしらの密約があったと考えるのが自然だろう。