日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン容疑者の逮捕を、今年5月の時点で予言していたといわれる記事がある。記事の筆者は、ベストセラー『日本の論点』(プレジデント社)の著者で、経営コンサルタントの大前研一氏だ。なぜ予言できたのか。今後のシナリオをどうみているのか。大前氏の特別寄稿をお届けしよう――。
北フランスのルノー工場で従業員との記念撮影に臨むマクロン大統領(中央)とカルロス・ゴーン同社会長兼最高経営責任者。写真=AFP/時事通信フォト

日産・ルノーの議決権を巡るせめぎ合い

日産自動車のカルロス・ゴーン元会長の逮捕容疑が明らかになって約1週間がたった。この間に日産では臨時取締役会が開かれ、ゴーン氏の会長職と代表権が解かれた。

日産とルノー、さらに日産が出資する三菱自動車を絡めた3社連合がどうなるのかに注目が集まるが、今後の展開を日産にとって有利に運べるかは、“交渉力”によって決まるはずだ。西川社長がどこまで交渉力を発揮できるのかは未知数だが、現状は非常に難しい状況にあると言わざるを得ない。

ここからは、日産にとっての交渉相手をルノーと位置づけて考えなくてはならない。ルノーはフランス政府から15%の出資を受けているため、フランス政府の動きにも目を向ける必要がある。まずは日産とルノーの現時点の力関係を見ておきたい。

日産の株主構成を見ると、ルノーは発行済株式の43.7%を保有している。大株主として、株主総会のときには強い影響力を行使できる状態だ(集計時点によっては43.4%となるが本稿では43.7%として話を進める)。

その一方で、ルノーは問題の発端となったゴーン氏を日産に送り込んだ責任がある。株主として日産の帳簿を閲覧する権利もあったわけだから、監督責任があるという見方もできるだろう。今後日産がルノーと交渉するにあたって、これらの点はひとつの追及材料になる。

差し当たって、日産とルノーの間で攻防が予想されるのが、「取締役の選任」についてだ。

日産は11月22日に臨時取締役会を開いた。ここでゴーン氏の会長職や代表権を解き、事件に共謀したとされるグレッグ・ケリー氏も代表から外したわけだが、両名はいまだ日産の取締役にとどまっている。