ゴーン前会長が食い物にしたのは“日産だけ”なのか?

再び日産とルノーの交渉の展開に話を戻そう。交渉を有利に進め、日産が完全子会社になるのを防ぐためには、「おたくが日産に被害をおよぼしたのだから、完全統合はやめてください」と主張し、納得させなくてはならない。交渉で駄目なら訴訟に移る可能性もあるが、いずれにしても極めて難しい展開になるだろう。

大前研一『日本の論点2019~20』(プレジデント社)

ルノー側の反論として、ゴーン氏を日産で好きにさせていたことについて、日産側の責任を問う声も出てくるはずだ。これはもっともなことだ。おそらく西川社長も無傷ではいられないし、日産を辞めることも考えられる。

そうしたとき、日産にはどのような“攻め手”があるのだろうか? 私が追求すべきと考えるのは、「そもそもの発端には、フランス政府とゴーン氏の密約があったのではないか?」ということだ。

今回の事件の全貌が明らかになるにつれ、見えてくるのはゴーン氏がいかに金に執着していたかという点だ。ここで私が感じたのは、「なぜ日産だけを食いものにしたのか?」という点である。

ゴーン氏は2005年からルノーのCEOとして長年にわたり鎮座しているが、今回のお金にまつわる問題はすべて日産絡みだ。立場としてはルノーに対しても同じことができるはずだが、なぜやらなかったのだろうか? 私は、ゴーン氏にとってルノー、さらにはその後ろに控えているフランス政府を恐れる事情があったのではないかと予想する。

あるいは、すでにルノーの社内でも日産と同じような問題を起こしているのに、まだ明らかになっていないだけなのかもしれない。真相はいまだ不明だが、日産としては、こうした点も厳しく攻め、真実を白日のもとにさらす必要があるだろう。

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(写真=AFP/時事通信フォト)