ルノーは手持ちの株数だけで単独決議ができる

取締役の地位を剥奪するには、株主総会の決議が必要だ。大株主であるルノーの意向が直接影響するため、そう簡単にゴーン氏やケリー氏のクビを切ることはできない。そうすると、取締役の解任をめぐって、株主のもつ議決権行使の委任状を争奪し合う「プロキシーファイト」になる可能性もある。

しかも、ルノーは43.7%の株を保有しているため、プロキシーファイトに持ち込まずとも、株主総会の決議を単独で決められるかもしれない。株主総会において単独行使をするには発行済株式の過半数をもつ必要があるが、議決権を行使しない株主が仮に20%程度いれば、残る80%のなかで過半数を取ればいいわけだから、ルノーは手持ちの株数だけで単独決議をすることができるのだ。

日産出身者を取締役会のマジョリティにできるのか

日産が株主総会におけるルノーの影響力を消滅させる方法がひとつ存在する。それは、ルノーの株式の25%超を日産が取得するというもの。日本の会社法では、たとえばA社がB社の25%を超える株式を持つ場合、B社はA社に対して議決権を行使できなくなるため、このルールを利用するというわけだ。

これを日産に当てはめると、日産はすでにルノーの株式の15%を持っているため、あと10%を買い増しすればルノーによる議決権行使を防げる。そのためには株式の買収資金が必要だが、支払う体力はあるはずだ。

ところが、ここでもまた問題がある。株式買収のような大きな案件は取締役会の決議が必要となるが、ここで意見が割れる可能性があるからだ。

現在の日産の取締役会メンバーは9名で構成されているが、このうち日産出身者は西川社長を含め3人。一方のルノー派は、ゴーン氏、ケリー氏にルノー出身の取締役2名を加えた4人に上る。つまり、ルノー寄りの人間が優勢なのだ(※)。

このほかにカーレーサーの井川慶子氏と、経産省出身の豊田正和氏が取締役に含まれるが、日産側が主導権を握るためには、彼らも含め、今後ゴーン氏、ケリー氏の両名に代わる取締役が日産側とルノー側のどちらにつくのかが大きく影響する。

※初出時、取締役会メンバーを7名としていましたが、正しくは9名です。訂正します。(11月29日19時00分編集部追記)