ついに対等な資本関係に

7月26日、日産自動車はルノーとの最終契約を締結したと発表した。主な内容は3つある。まず、両社は資本関係を対等にする。ルノーの出資比率は43%から15%に低下する。次に、日産はルノーが設立するEV会社、“アンペア”に出資する。日産にとって、EVなど電動車分野の事業運営体制を強化するためにルノーとの連携強化は欠かせない。3点目としてインド、中南米、欧州で協業を強化する。

3社連合の提携関係見直しについて共同記者会見した(左から)日産自動車の内田誠社長、仏ルノーのジャンドミニク・スナール会長、三菱自動車の加藤隆雄社長、ルノーのルカ・デメオ最高経営責任者(CEO)=2023年2月6日、イギリス・ロンドン
写真=時事通信フォト
3社連合の提携関係見直しについて共同記者会見した(左から)日産自動車の内田誠社長、仏ルノーのジャンドミニク・スナール会長、三菱自動車の加藤隆雄社長、ルノーのルカ・デメオ最高経営責任者(CEO)=2023年2月6日、イギリス・ロンドン

2023年2月、日産は以上の内容を三菱自動車を含むアライアンスの新しい取り組みとして発表した。ただ、日産の内部で電動車関連の製造技術の流出などを懸念する声が上がった。その解消のため、最終契約の締結は4カ月ほど遅れた。

その間、世界の自動車市場の環境変化は激化した。日産の最重要市場である中国では、EVなどの値下げ競争が激化した。一方、米国ではインフレ抑制法などを追い風に、各国の主要自動車メーカーやバッテリーメーカーが相次いで投資を積み増した。

今後、米国など世界経済の不安定感は徐々に高まるだろう。それに伴い、主要先進国の自動車需要にも下押し圧力がかかりやすくなる。日産にとってルノーとの対等な資本関係の実現は重要だ。ただ、それだけでEVシフトの加速などグローバルな競争に勝ち残れるわけではない。同社がどのように今後の収益力を高めるか、先行きは依然として不透明だ。

「小が大を支配する」構図が24年続いた

ルノーとの対等な資本関係の実現は、日産にとって悲願の達成だ。1990年初頭にわが国のバブルが崩壊した後、日産は国内の需要減少、過去に実行した投資負担を背景に経営体力を失った。1999年、日産は自力での再建が難しくなり、ルノーに出資を求めた。ルノーは日産株の37%(当初)を取得した。

ルノーは日産にカルロス・ゴーンを送り込んだ。ゴーンの指揮のもと、日産は大胆なコストカットを進めた。また、グローバル市場でのシェア拡大にも取り組んだ。その後、ルノーは出資比率を43%まで引き上げ日産に対する影響力を強めた。実力が下回る企業による支配の強化に、日産内部での不平や不満が高まったことは想像に難くない。

一方、ルノー、その筆頭株主であるフランス政府にとって、内燃機関のすり合わせ技術などを吸収するために日産への支配を強める必要性は高まった。EV関連の製造技術の移転を推進するために一時、ゴーン主導による日産、三菱自動車との経営統合も企図した。想定外だったのはゴーンの逮捕だ。日産とルノーの関係は不安定化し、経営統合計画は行き詰まった。