来年前半にもアンペアの上場を目指す
その後、世界の自動車業界は急激に構造変化が進んだ。ネットとの接続、自動運転技術の実用化、シェアリング、電動化(CASE)に関する取り組みが世界全体で勢いづいた。ネットとの接続に関しては、IT先端企業に比較優位性がある。電動化によって自動車の生産様式はすり合わせからデジタル家電のようなユニット組み立て型に移行する。
日独など自動車メーカーが磨いてきた内燃機関のすり合わせ技術という参入障壁は低下し始めた。国境を越えた自動車メーカーの経営統合や資本業務提携、異業種とのアライアンスも急増した。ルノーにとっても、日産にとっても、協力できる部分を残しつつ、より多くの選択肢を手に入れることの重要性は高まった。
その結果として、日産とルノーは15%ずつ、対等に株式を保有する関係を実現することで合意した。2024年前半にもルノーはアンペアの上場を目指す模様だ。
最も重要な中国市場の販売台数が大幅減
ルノーに比べ、現時点で日産は国内外の大手自動車メーカー、バッテリーメーカー、IT先端企業との新たな提携を発表するにはいたっていない。アンペアへの出資金額は2月の発表時点より小さくなるとの見方もある。今後の発表を確認しなければならない部分はあるが、ひとまず日産は自力で事業を運営しようとしているように見える。
ただ、最重要市場である中国での新車販売台数の減少を見る限り、先行きは楽観できない。6月、中国における日産の販売実績は前年同月比28%減(1~6月期は同24.4%減)だった。
足許、不動産市況の悪化などによって、中国は高度経済成長期の終焉を迎えつつあると考えられる。若年層を中心に、雇用、所得環境は悪化した。景気の停滞懸念の高まりに影響され、支出を可能な限り抑えて貯蓄(および債務の返済)を優先する消費者は急速に増え始めた。