世界時価総額ランキングというのがあります。ベスト10にはアップルをはじめ、アマゾン、グーグルを傘下に持つアルファベット、フェイスブック、マイクロソフト、中国のアリババなどが名を連ねています。目立つのはいずれもIT関連で、イノベーションによって世界市場で圧倒的な地位を占めている企業ばかりです。

一方でかつての常連だったGEやIBM、エクソンモービルなどが順位を大きく下げているのを見ても、今の時代、イノベーションを起こすことができるかどうかが企業の成長を大きく左右することがわかります。

では、日本企業はどうかというと、今やベスト50に登場するのはトヨタ自動車のみです。かつてランキングには日本の金融機関などが名を連ねていたことを考えると、少なくとも時価総額というランキングでは日本企業の地位が著しく低下していることがわかります。

イノベーションは「なぜ」から生まれる

だからこそ多くの企業はイノベーションを希求するわけですが、イノベーション企業の代表格・アップルの創業者、故スティーブ・ジョブズによると、イノベーションを体系化するとか、「イノベーションの5カ条」みたいなものを社内に掲示するのは「カッコ良くなろうとした結果、かえってカッコ悪くなっている人間みたいなもので、本当に痛々しい」というほど、イノベーションは厄介な存在です。

とはいえ、今や企業にとって、イノベーションを起こせるかどうか、イノベーティブな企業であるかどうかは将来を左右する課題であるのはたしかです。だとすれば、「どうすればイノベーティブな企業になれるのか?」「何がイノベーションを妨げているのか?」を知るのはとても大切なことではないでしょうか。

「プリウス」や「レクサス」で自動車業界に革新を起こしたトヨタの事例は、「なぜ自分の会社ではイノベーションが起きにくいのか?」のヒントを与えてくれます。イノベーションが起きにくい理由、アイデアが生まれにくい理由は「企業の中」にあるものです。それを改善するためには、いくつもの「なぜ」を繰り返すことが有効です。トヨタ式5W1H、すなわち「5WHY+1HOW」は、トヨタのイノベーションを支えているのです。

桑原晃弥(くわばら・てるや)
経済・経営ジャーナリスト
1956年、広島県生まれ。慶應義塾大学卒。業界紙記者などを経てフリージャーナリストとして独立。著書に『トヨタだけが知っている早く帰れる働き方』(文響社)、『トヨタ 最強の時間術』(PHP研究所)、『スティーブ・ジョブズ名語録』(PHP文庫)、『1分間バフェット』(SBクリエイティブ)、『伝説の7大投資家』(角川新書)など。
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