公的保険の適用が見送られると、保険外の薬を使用した場合、保険診療との併用を禁じた混合診療ルールに違反し、これまで支払った入院費などもすべて患者の自己負担となる。

このため政府内では、混合診療ルールに例外規定を設け、保険適用されていない薬を使っても他の医療費には保険が使えるようにしようとの意見も出ている。

高価な薬をどう扱えばいいのか。臨床現場に新たな課題が浮上している。

オプジーボの課題に触れた読売社説と毎日社説

本庶氏のノーベル賞受賞を新聞各紙は10月2日付で社説のテーマに取り上げた。

しかしオプジーボをはじめとする新しいがん治療薬の価格問題について指摘したのは、読売新聞と毎日新聞の社説だけだった。

読売社説は終盤で「治療費の抑制も求められる。オプジーボの場合、日本で登場した頃には、1人当たり年間3000万円以上を要した。適用範囲の拡大とともに、約1000万円に引き下げられるが、依然、手軽に使える水準とは言い難い」と指摘している。

この指摘とは別に読売社説は治療成績についても指摘している。

「課題は、がん免疫療法の治療成績の向上や効率化である」
「患者の2~3割には顕著な効果があるものの、全く効かない例も多い。患者によっては、免疫のブレーキが外れたことで強い副作用が生じる。腫瘍が消えた後、いつまで薬を使い続けるべきか、その見極めも難しい」

課題を指摘する読売社説の姿勢は認めよう。そもそも薬にはベネフィットとリスクの両面がある。諸刃の剣なのである。その点を忘れてはならない。

効果も薬価も高い新薬にどう対応していくか

毎日社説もその最後にオプジーボの価格についてこう指摘している。

「日本ではオプジーボが非常に高価だったことから適正な薬価が議論となった。今後、効果も薬価も高い新薬にどう対応していくかも、改めて考えておくべき課題だろう」

ノーベル賞受賞というニュースに対する社説は、基本的にはたたえて喜ぶものだろう。

だが、それだけでは足りない。「良かった。良かった」とほめたたえるだけでは、論説の意味がない。読んでいてつまらないし、読者に失礼である。

行数は決して多くはないが、オプジーボの課題に触れた読売社説と毎日社説は評価できる。