本庶佑氏の研究が、新型がん治療薬「オプジーボ」に

今年のノーベル医学生理学賞は、人の体の中で異物を攻撃する免疫にブレーキをかけるタンパク質を見つけた京都大学の76歳の本庶佑(ほんじょ・たすく)特別教授と、米テキサス大学の70歳のジェームズ・アリソン教授に与えられた。

受賞の理由は、免疫機能のブレーキを解除することによるがんの治療法を確立したことだった。本庶氏の研究は、小野薬品工業が2014年9月に発売した新型がん治療薬「オプジーボ」につながった。オプジーボはがんの治療に高い効果があり、世界から注目されている。

本庶氏とアリソン氏の発見を契機に、オプジーボのような「がん免疫療法」が次々と研究・開発されている。いまや免疫療法は手術、放射線照射、抗がん剤に続く第4の治療となり、これまでの治療が難しい患者に大きな希望を与えている。

2018年10月5日、ノーベル医学生理学賞の受賞決定後初の講演を終え、記者会見する本庶佑京都大特別教授(写真=時事通信フォト)

当初「1人年間3500万円かかる」といわれた

しかし、がん免疫療法で使われる薬はいずれも、製造工程が複雑なため、非常に高額な薬となる。むやみに公的保険を適用すると、保険財政が崩壊する危険性が指摘されている。

たとえばオプジーボは、当初「1人年間3500万円かかる」といわれた。最初に承認された皮膚がんでは、患者数が少ないため大きな問題にはならなかった。だが、患者の多い肺がんや胃がんなどで承認されれば、急激に使用量が増え、公的保険への財政圧迫が懸念された。

そこで政府は特例的に3度もオプジーボの価格を引き下げた。その結果、今年11月からは3分の1以下の「年間約1000万円」になっている。

高価な薬をどう扱えばいいのか

日本には公的保険があるため、患者の負担は原則3割だ。さらに「高額療養費制度」の適用があるため、高額なオプジーボを使っても患者の負担は年間100万円程度で済む。だが、オプジーボの投与を受ける患者が増えれば、保険財政は大きく圧迫される。

現在、米国で1回5200万円という白血病治療薬が、日本の厚生労働省に承認申請されている。こうした高額ながん治療薬は、世界中で開発が進んでいる。

高額な治療薬はどこまで利用すべきなのか。患者の命は待ってくれない。新薬の登場に合わせて早急に検討し、公的保険の適用を見送るか、それとも薬価を一定まで引き下げるかを決めるべきである。