短い行数に情報が詰まっている読売社説

特に読売社説の解説は、手堅く的確なものだった。読売社悦は次のように書いている。

「免疫は病原体などの外敵からは体を守るが、自らの細胞が変異したがんには十分に機能しない」
「本庶氏らは、その原因を遺伝子レベルから探究した。がん細胞は、免疫を担う細胞が攻撃してこないよう、突起を出してブレーキをかけていることを突き止めた」
「これを基に、ブレーキを外す薬剤を開発した。難治性の皮膚がんや肺がん、胃がんなどで腫瘍が消える効果が確認されている」
「がん免疫療法は今や、外科手術や放射線療法、抗がん剤による化学療法と並ぶ第4の治療法だ」

その通りだ。短い行数に情報が詰まっている。

安倍首相は「目先の結果」しか見ていない

毎日社説は「がん治療の新地平開いた」と見出しを立て、「本庶氏は新しいタイプの抗がん剤『オプジーボ』の開発につながる基礎研究が評価された」と書く。そのうえで基礎研究の重要性を指摘する。

「ただ、忘れてはならないのは、この成果が最初から抗がん剤を開発しようと考えた結果ではないことだ。生命の基本的な働きを解明しようとする四半世紀前の基礎研究が、結果的に抗がん剤につながった」

さらに毎日社説は訴える。

「しかも、今回の受賞決定は現在の日本の研究の活力を示しているとはいえない。それどころか、最近の日本の科学界は論文数も低迷し、暗雲が漂っているように見える。その背景にあるのは、目先の成果を重視する政府の基盤的な研究費の軽視、行き過ぎた研究投資の『集中と選択』ではないだろうか」

この社説を書いた毎日新聞の論説委員は、安倍政権の問題点をよく捉えている。安倍晋三という政治家は「目先の結果」しか見ていない。そう疑われても仕方がない言動が多すぎる。

安倍首相だけではない。政治から経済、文化まで日本の社会全体にその傾向が出ていると思う。

毎日社説は「研究を始める前にその出口を知ることはできず、日本が今後もこうした成果を上げようとするなら、基盤的な研究費を惜しむべきではない」と主張している。実にその通りである。読み応えのある社説だった。一読を勧めたい。

(写真=時事通信フォト)
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