日本人の2人に1人ががんになる時代。昔に比べて治療法の幅は広がり、私たちの選択肢も増えました。がんに対して、どう向き合えばいいのか。名医たちに最新の治療法と病院選びのポイントを聞きました。第4回は「大腸がん」について――。(全4回)

※本稿は、「プレジデントウーマン」(2018年7月号)の掲載記事を再編集したものです。

超早期のがんなら、おなかを切らずに完治できる

大腸がんになる女性が増えている。長さ約1.5mの大腸に発生するがんは、盲腸からS状結腸までの結腸がんと、直腸がんに分けられる。進行すると、血便、便が細くなる、下痢と便秘を繰り返す、残便感、貧血、急激な体重減少といった症状が出る。

イラスト=生駒さちこ

大腸の壁は、粘膜、粘膜下層、固有筋層、しょう膜、しょう膜下層の5層構造。「がんが粘膜か粘膜下層のごく浅いところにとどまっている場合には、おなかを切らずに、内視鏡治療で病変を切除するだけでほぼ100%完治します」

がん・感染症センター都立駒込病院消化器内科部長の小泉浩一医師は、そう説明する。内視鏡治療は、肛門からレンズと器具のついた内視鏡を入れ、消化管の内側から病変を切除する方法。ポリープを根元から取るポリペクトミー、病変を浮き上がらせて切除するEMR(内視鏡的粘膜切除術)、特殊なナイフで病変をはぎ取るESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)がある。

「粘膜内病変なのに大きくて取れないと言われたときには、大腸がんの内視鏡治療に力を入れている専門医のセカンドオピニオンを受けるとよいでしょう」(小泉医師)

がんが粘膜下層を越えて広がっている場合には、外科手術と薬物療法で治療する。大腸がんは、他の臓器に転移があるステージ4でも、肝臓や肺への転移なら、できるだけ手術で切除して治癒を目指すのが基本だ。

大腸がんになったとき、頼れる病院はどこか。DPCデータを集計し、結腸がんと直腸がんの手術症例数の合計が多い順に全国50病院をリストアップ。大腸の内視鏡治療は入院せずに外来で実施することも多い。DPCデータは入院患者のみなので、内視鏡治療と薬物療法の症例数は、参考程度に見ていただきたい。

「特に病院を選んだほうがよいのが、難易度の高い直腸がんの手術です。肛門に近い下部直腸がんでも、専門病院では肛門を温存できることがあります。一方で無理に温存すると排便障害や再発のリスクが増えるので100%近く温存している病院にも要注意です」

そう指摘するのは、国立がん研究センター中央病院大腸外科・科長の金光幸秀医師だ。腹腔鏡手術も広がっているが、進行しているがんでは開腹手術が適しているケースもある。直腸がんは、2018年4月から「ダ・ヴィンチ」を用いたロボット支援手術も保険診療で受けられるようになったが、患者への負担や治療成績は一般的な腹腔鏡手術と同程度と考えられている。

「外科医、薬物療法の専門医、内視鏡医などさまざまな専門家が連携し議論して、最適な治療を選択してくれる病院を選びましょう」(金光医師)