両者が絶対に引けないチキンレースへ

「その中には過去の協会の不祥事として、弟子へのかわいがり、野球賭博、そして最大のタブーたる八百長に関しても記述があったようです。(中略)協会としては税制上の優遇措置が受けられる公益財団法人の立場を取り消されるおそれがあるため、なんとしてでもこの告発状の存在を抹消したかった」(相撲部屋関係者)

その八百長の温床になっているのが、モンゴル人力士たちが集まって飲み合う「モンゴル互助会」だと貴乃花は考えているようである。

現役時代、ガチンコ相撲で21回の優勝をした貴乃花としては、絶対見過ごすことのできない「悪習」である。

告発状に書いたことは全部真実だと主張する貴乃花と、何が何でもそれを撤回させたい相撲協会とのガチンコ勝負は、両者が絶対引けないチキンレースの様相を呈していくのである。

臨時年寄り総会で2時間ものつるし上げがあった

変化が出たのはこの夏だった。稽古場で貴乃花が倒れ、救急車で病院に運ばれ緊急入院してしまうのだ。幸い、すぐに回復したが、元大横綱も46歳。病院のベッドで来し方行く末を考えたのではないだろうか。

9月に入って「貴乃花が引退する」という情報が流れ始めたという。

日馬富士殴打事件以来、貴乃花側に立っていい分を載せ続けてきた『週刊文春』(10月4日号、以下『文春』)は、この情報をつかんでいたようである。9月25日の引退会見が行われる前日、文春の記者が貴乃花に「相撲協会を辞めるのか」と問いかけていた。

『文春』によると、「平成の大横綱を退職に追い込んだのは、日本相撲協会による“搦め手”の凄まじい圧力だった」。弟子の不始末によって告発状を取り下げた経緯を報告した臨時年寄り総会で、協会を混乱させたとして貴乃花への怒号が飛び交い、2時間ものつるし上げがあった。

だが、貴乃花は不始末を起こした弟子が相撲を続けられるよう、ひたすら頭を下げ続けていたという。