騒動で置き去りにされたのは相撲を愛するファンたち
自分たちの利権を守ることにだけしか関心がなく、相撲改革など頭の隅にもない相撲協会の人間と、頑なに自分の正しいと思う道を突き進み、他人の意見に耳を傾けない意固地な相撲バカとが、敵意をむき出しにして争った結果、置き去りにしたのは相撲を愛するファンたちである。
私はどちらにも非があると思う。お互いが非を認め、譲るところは譲り、少しでもいい方向へ進めていくのが、成熟した組織ではないのか。
このところ次々に出て来るスポーツ界の醜聞は、力のある人間が、長年その世界をわがもの顔に牛耳っていたため、組織が濁り、腐敗が進んだためである。
相撲界を開かれた近代的な組織に生まれ返らせるために必要なのは、健全なスポーツジャーナリズムであるはずだ。相撲界の悪弊を指摘し、横綱とはどうあるべきかを説く、そういう真っ当なジャーナリストが何人かいれば、今回のような事態は起きなかったはずだ。
今のスポーツ界の乱脈さは、健全なジャーナリズムの不在を示している。それこそが一番の問題だと、私は思う。
(写真=時事通信フォト)