「6」から始まる金額が10%以上あったら疑わしい

ただし、ベンフォードの法則はどんな数値にもあてはまるわけではない。たとえば、人為的に割り振られた数はダメで、電話番号、郵便番号、自動車のナンバープレートなどはこの法則が成り立たない。また、数値の上限や下限が定まっていて、その幅が狭いものもNGだ。人の身長はほぼ1~2mにおさまるし、足のサイズも20~30cm程度だから、ベンフォードの法則は成り立たない。

こうしたベンフォードの法則は、企業や組織内部のいろいろな不正のチェックなどに有効だ。たとえば、ある営業パーソンが提出した領収書。もし「6」から始まる金額が10%以上あったとしたら、疑わしいと判断したほうがよい。なぜなら、ベンフォードの法則では、最初のケタに6が現れる確率は6.7%だからだ。

それとは逆に、最初のケタの数字が1~9までまんべんなくバランスがとれている場合も怪しいと思わざるをえない。どうしてか。数字をごまかそうとする人はなるべくいろんな数字を偏りなく書こうとするが、ベンフォードの法則にしたがえば、各数字が出現する割合は決まっているからである。

私は国税局の元国税専門官なので、実際にそうした経験がある。個人の確定申告の場合、収支内訳書という書類を提出するが、金額の最初のケタは本来1~3が多いはずなのに、5以上の数字が多いとか、反対に1~9が平均的に妙にバランスがいいときは、怪しいと目をつけていた。

部下からあがってくる数字がおかしいと感じたときなど、ベンフォードの法則を知っていると、ごまかしを見抜く有用な判断材料になるだろう。

さんきゅう倉田
お笑い芸人 元国税専門官
大学卒業後、東京国税局に入局。法人税の調査を経て、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに入る。お笑い芸人として、税務調査やガサ入れのネタなどでメディアやライブに出演。著書に『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』がある。
(構成=田之上 信 写真=iStock.com)
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