紙芝居のように、煽りながら展開

相手をさらに集中させるには、会話の中に接続詞を入れるといい。「しかも」「実は」「続いて」「さて」などの接続詞を、抑揚をつけて入れるといいアクセントになります。口語ならではの語りかける雰囲気が演出できて、場が和みます。池上彰さんは終助詞の「ね」を上手く使いますね。「これがね、地球の裏側なんですよね」という話し方をよくされています。

言い間違いもよくありますよね。プレジデントの取材を受けつつ、「プレジデントの最新号読みました」と言うところを、間違って「ダイヤ(モンド誌)」と言いかけ、「じゃなくて……ごめんなさい」となるケース。言い間違いが多いと信憑性や信頼度が下がります。こういうときは、咄嗟に「ダイヤ……モンドも読むんですけど、プレジデントの最新号読みました」と言い切って切り抜けます。かなり上級テクニックですが、慣れと訓練で、できるようになります。マルチタスクの練習をやると効果的です。例えば、紙に計算式を書きながら、まったく違う内容について話をする練習です。これ、ゲーム世代の若い人だと意外とできますよ。

プレゼンで最大の効果を発揮するのが「繰り返し」と「ブリッジ」という技術。絶対に覚えてもらいたいことや、本質的なことについては、何度も繰り返しながら伝えます。

ブリッジとは、スライドとスライドの間を繋ぐフレーズのことです。たとえば「はい、こちらが交通事故の原因の分析です。事故原因の分析の結果、上位にこんなものがあります」と切れ切れの説明にブリッジを入れると「こちら側が交通事故の統計です。日本ではこういった事故がたくさん起きていて、このような統計です。では、これらの事故がどういう原因で起きているのか、それがこちらの資料です」と繋がります。次のスライドを「呼んでくる」ひと言を入れることで、上手く誘導できます。紙芝居のように煽りながら相手を引き寄せ、スライドを展開するのがコツです。

私は元々エンジニアで、普段は黙々と作業をしていました。あるとき「こんな凄いのをつくった」「こんなところを工夫した」などと言いたくて堪らなくなりました。その「言いたい」が募って、これからは伝える能力を磨かないと生き残れない、と思うようになりました。今は伝える手段がいくらでもありますよね。伝える能力を磨くのは絶対にお得です。ぜひ、みなさんにもその能力を磨いてほしいです。

▼直前→本番check point
(1)直前までtwitterで情報収集
(2)相手の見た目・服装etcから話題を拾う
(3)トークは始めゆっくり、後からspeed up
(4)パワポ「画面ズーム」「蛍光ペン」機能
(5)順序・カウントは指を折る
(6)目線は会場の対角線上を動かす
(7)言い間違いは否定・謝罪ナシで繋げ
(8)「繰り返し」と「ブリッジ」
西脇資哲(にしわき・もとあき)
日本マイクロソフト業務執行役員
1969年生まれ。日本オラクルなどを経て2009年日本マイクロソフト入社、唯一の日本人エバンジェリストに。14年より現職。累計5万人超、200社以上が受講するプレゼンメソッドの講師。
(構成=篠原克周 撮影=的野弘路)
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