仕事のできる人は、わかりやすい説明のコツを知っている。元防衛事務次官の黒江哲郎さんは「経験上、説明を聞く側の記憶に残るのは3項目くらいが限度だ。論点を3つにしぼって簡潔に話すと、相手の理解度が増す」という――。

※本稿は、黒江哲郎『防衛事務次官 冷や汗日記』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

役員室のテーブルに座ってビジネスマン
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事務方トップが新人に伝授した仕事に必要なスキル

平和安全法制が整備された直後の2015年10月に事務次官に任命されました。

防衛省の政策すべてを事務的に取りしきる立場ですので、仕事はそれまで以上に難しくなり、責任も重くなりました。同時に、役人人生の終わりが見えてきたせいか、自分は後進の人たちに何を伝えられるのかということをしばしば考えるようになりました。

ちょうどそんな折、人事院から新任の公務員を対象とする初任研修で「公務員の在り方」というテーマで公務員としての心構えについて講義してほしいという依頼がありました。次官になって半年ほどが過ぎた2016年6月のことでした。

この講義をきっかけに、中央官庁の公務員の仕事とはどういうものか、仕事をうまくこなすにはどんなスキルが必要か、どんな心構えが必要か、それらを身につけるために具体的に何をすればよいかなどを、できるだけ実践的な形でまとめようと意識するようになりました。

「中央官庁の仕事は3Kだ」と話すワケ

中央官庁は「3K職場」だ、というのが私の実感です。

仕事量は多くて「きつい」し、シャワーも使わずに泊まり込みや徹夜作業を続けていれば体は「汚い」し、働き過ぎで体を壊す「危険」や仕事を失敗することによる別の「危険」もそこら中に転がっています。

「きつい、汚い、危険」という3K職場の要件を十分に満たしていると言えるでしょう。しかし、私が言いたい「3K職場」は、これとは違います。

その「3K」とは、「企画する(考える)」「形にする(紙にする)」「(関係者の)共感を得る」という三つのKのことです。

防衛省の内局を含め中央官庁はそれぞれの所掌に従ってその時々の課題への対応案を企画し、形にし、関係者の共感を得て実行に移すという仕事をしているのです。