必要なのは2つの基本要素だけ
この3Kサイクルは、課題に対応した適切な政策案を企画する(考える=第1のK)ことから回り始めます。
政策を企画するための特別なコツはありません。「勉強」と「経験」が必要なだけです。
内局に勤務する職員たちは、みんなこのことを知っているはずです。
このため彼らは、担当分野に関係する様々なことを勉強し、実務に取り組んで経験を積み重ね努力しています。
一つだけ付け加えるとすれば、「物事をありのままに見ることが大切」だという点です。
防衛政策や安全保障政策は、生きて動いている国際情勢を相手にする仕事です。これに対応するためには、対象を冷静かつ客観的に観察することが必要不可欠です。
物事をありのままに見られる人は少ない
単純なことのように聞こえますが、最初からこうした物の見方をできる人はそう多くないように思います。
私自身も先入観や希望的観測、楽観や悲観に左右されて、「物事をありのままに見る」ことがなかなかできませんでした。
51大綱の見直し作業の際には、冷戦終結後の国際構造を無理に自分が慣れ親しんだ予定調和的な物差しで測ろうとしたり、沖縄問題では基地周辺住民の意思を一面的に解釈しようとしたり、多くの失敗を繰り返しました。
結局、「物事をありのままに見る」ことの大切さがわかったのは、現役時代も残り少なくなった頃でした。ここでも「勉強」と「経験」が大切なのだと思います。
3Kサイクルの起点となる第1のKが大事なことは当然ですが、政策は案を企画するだけで実現されるわけではありません。
行政機構は複雑で関係部署が多く、一つの政策を作り上げ実施していくためには他の部署の理解と協力が不可欠です。さらに、重要な政策であれば、最終的に立法府の了解を得ることも必要となります。
長い官僚生活の末に編み出した必殺技
第2のKである紙の書き方について、試行錯誤の末に必殺技(?)として編み出したのが「3の字固め」でした。
政策を説明する際にも、何をどのような順序で伝えるかという説明の流れ、ストーリー展開を考える必要があります。
一般に、文章は「起承転結」でストーリーを構成するとわかりやすいと言われています。しかし、かねがね私は政策を説明するのに「起承転結」の4段階では冗長だと感じていました。
他方で、政策を企画するプロセスを単純化すると、「課題」を認識し、その解決策を「検討」し、最も望ましい「結論」を出すということになります。
そこで「起承転結」の4段階に代えて、この「課題・検討・結論」の3段階(これも偶然3Kです!)でストーリーを構成すれば、より簡潔な説明が可能なのではないかと考えました。