一流企業のエース社員は、どうやって資料を作っているのか。今回、5つの企業にプレゼンテーションのスライド資料を提供してもらい、その作り方の極意を聞いた。第2回は花王・多田佳祐氏のケースについて――。(第2回、全5回)

※本稿は、「プレジデント」(2018年7月30日号)の特集「できる人の資料術」の掲載記事を再編集したものです。

論理的な全体のストーリー

研究開発とマーケティングが一体となった新製品の投入で、ヒットを飛ばす花王。2018年4月発売の「薬用ピュオーラ 泡で出てくるハミガキ」もその1つ。日本初の舌に直接のせる「泡」を採用して、口臭予防効果を高めた。発売1カ月で当初計画の約1.7倍を売り上げた。

販促効果で計画以上の売り上げに。

そうしたヒットの立役者の1人が多田佳祐さんだ。全国各地の量販店や小売店への売り込みを直接担当する販売子会社の花王グループカスタマーマーケティング(KCMK)に対するプレゼンの成否は、新製品の売り上げを大きく左右する。その重責を担ったのが多田さんだ。

多田さんはパワーポイントの資料の作成で大切にしている点について、「最も伝えたいことは何かを、まず明確にすることです」と話す。相手の心に残るのはせいぜい1つか2つだからだ。もちろん、きちんと伝えて理解してもらうためには論理的な筋道が重要で、多田さんは常に全体のストーリーも意識している。

「販売・流通担当者向けのプレゼンでは、(1)市場動向、お客さまの意識変化などの背景説明、(2)そしていまお客さまが求めている真のニーズの抽出、(3)そのニーズ実現に向けた花王の技術的な対応の提示――という流れが基本で、パワポの資料もそれに合わせます」(多田さん)

まず(1)については、近年、歯周病や口臭を気にする人、悩んでいる人が増加していることを客観的なデータとしてグラフで提示。トレンドを矢印で強調したり、重要なグラフを線で囲むなどして、わかりやすくした。(2)について、口臭では対人関係など深い悩みを抱えている人も少なくないことを消費者へのインタビューをもとに示し、そうした層をターゲットに開発にいたった経緯を盛り込んだ。