とすれば、数十%におよぶ競争不全部門の大幅な生産性向上がない限り、日本全体の生産性キャッチアップはおよそ望むべくもない。十数%しかない競争貫徹部門がいくら生産性を高めても、それだけでは日本全体の大幅な生産性向上は達成できないのだ。
そこで、「イノベーション→生産性向上→経済成長」というシナリオを貫徹するために、能力構築競争で鍛えてきた「高生産性=競争貫徹部門」から「低生産性=競争不全部門」へ、大規模な「ものづくり知識の移転」を行う必要がある。先端技術産業やベンチャー企業の勃興のみに頼った日本全体の生産性の飛躍は、現実的に難しい。
かくして、ものづくり論を製造業の生産現場のみに閉じ込めず、産業横断的な広義の概念として展開することが、21世紀の日本経済全体を論じるうえで不可欠になる。だからこそ、我々は今、「開かれたものづくり」を論じなければいけないのである。
※参考文献
Hayashi, Fumio and Edward Prescott, “The 1990s in Japan:A Lost Decade,” Review of Economic Dynamics, Vol.5, No.1, February 2002, pp.206-235.