大切なのは整理と整頓を年中行事にしないこと。そのためにはきちんとルールを決め、二度と整理と整頓を繰り返さなくてもいいようにすることです。
チームは不要な在庫を抜き出して、空いたスペースに定番商品や広告商品といった分類ごとに置き場所を決め、どの商品がどこにいくつあるかが見えるようにしました。
在庫が見えないと複数発注などのロスを生んだり、せっかくの売れ筋商品を在庫があるにもかかわらず売り損なうというミスを生みやすいからです。
最初に狙った以上の結果が得られる
さらにチームは回転の速い商品は売り場の近くに置くことで、取りに行くとか、探す、運ぶといったムダを排除しました。また、当日納品された商品をどこにどのように置くかもきちんと決めることで置き方の混乱を防ぐようにしました。
こうした改善を積み重ねた結果、在庫が4分の1も削減されただけでなく、「探す」「運ぶ」「戻す」といったムダな作業も大幅に削減されることになりました。
仕事として当たり前のようにやっていることの中にはたくさんのムダが含まれています。A社はトヨタ式5W1H思考で課題解決に取り組み、汚れない職場を手に入れたのみならず、たくさんのムダを省いたことで店の売上げ、利益ともに増加に転じさせることができました。
「Why?」を粘り強く繰り返し、見つかった真因に対策を打っていくと、最初に狙った以上の結果を得られるのが、トヨタ式5W1Hのすごいところです。みなさんも、身の回りの「しつこい課題」を、トヨタ式5W1H思考で解決してみてはいかがでしょうか。
経済・経営ジャーナリスト
1956年、広島県生まれ。慶應義塾大学卒。業界紙記者などを経てフリージャーナリストとして独立。トヨタ式の普及で有名な若松義人氏の会社の顧問として、トヨタ式の実践現場や、大野耐一氏直系のトヨタマンを幅広く取材、トヨタ式の書籍やテキストなどの制作を主導。著書に『トヨタだけが知っている早く帰れる働き方』(文響社)、『トヨタ 最強の時間術』(PHP研究所)、『スティーブ・ジョブズ名語録』(PHP文庫)、『1分間バフェット』(SBクリエイティブ)、『伝説の7大投資家』(角川新書)など。