第3類型は『モノのサービス化』です。モノ売りから価値自体を提供するサービスに切り替えるものです。継続性とデータ連携による新たな関係が構築された後に、さらなる効果を得るための類型です。代表例にGEの航空機用エンジンの飛行時間課金サービスがあります。エンジンを売るのではなく、飛行中にエンジンの状態を分析して航空会社に対して故障診断、的確な整備、燃費最小化、最適航路計画などを合わせたサービスを提供します。ここまで来ると、バリューチェーンが変わり、市場を変革する新たな価値提供が可能になります。

ただし、こうしたサービスを実現するには、類型1と2を経て十分なデータ取得と改善実績を確保するとともに、GEのように事業を根本から見直し、「技術に裏打ちされたサービス企業」となることを、経営層が意思決定することが不可欠になります。三つ目の類型が生み出す価値は「価値の商品化による市場変革」です。

このように、新たな価値の出し方は多様です。新たな価値を得るためには、継続性と信頼性を実現した後、現在の部門を越えた体制構築、顧客や関係者との連携を行い、既存のバリューチェーンを壊す経営判断が求められます。このようにIoT導入で成果を出すには、類型に応じてより上位の判断と決断を伴うということを、経営層が認識する必要があるのです。

理由2:IoTの構造を的確に把握できていない

IoTで成功しているGE、Uber、コマツなどの企業の事例を見ると、IoTの持つ市場変革と市場拡大の構造をうまく利用していることが分かります。

代表例はUberです。Uberは一般の人が運転手になるUberXのサービスを開始することで、急速な事業拡大に成功しました。決済なども自動化され便利で使いやすいこともありますが、飛躍的成功の要因は、一般のドライバーの信頼性評価システムの導入にあるといえます。Uberのドライバーはユーザーに評価され、5点満点中4.7以下となると仕事が得られなくなります。

Uberは、事業立ち上げ初期にハイヤー運転手に信頼性評価・向上システムを導入して実効性を確立した後、「UberX」で一般ドライバーにも同じシステムを導入しました。これにより、車両の投資なしにドライバー数を拡大し、評価によってドライバーの質が向上し、質の高いドライバーが増えると顧客が増え、顧客が増えるとドライバーも増えるという自己増殖的な拡大構造が実現されたのです。

そこには特徴的な二つの構造があります(図3)。一つ目は、モノの情報をモニタリングすることで、改善のループが自動的に回る仕組みが生まれることです。このループの力が強ければ改善は継続し、効果は高まります。結果にコミットするダイエットと同様な方法です。二つ目は、新たな付加価値を結びつけるループで、自律的に拡大する仕組みです。シェアの奪い合いではく、新たな価値創出で市場を拡大します。

この際、二つのループは相乗効果を出します。改善のループが継続的に回ることで、そこに価値を拡大する人たちが集まってループが強固になります。また、価値が拡大することでそこに集まる人が増え、改善のループも停滞せずに回り続けます。相乗効果によって成長していく仕組みを作ることが成功の秘訣です。実は、IoTの最も優れた特徴は、モノとインターネットをうまく連携することで、こうした構造が作りやすいことにあります。