しかし、この仕組みの難点は、継続性の確保、信頼を得て拡大させるのに時間がかかることです。概念実証(Proof of Concept=POC)の期間では、なかなか効果が出ず、疲弊して止めてしまうという話をよく聞きます。信頼性を向上する「改善のループ」と事業を拡大する「価値拡大のループ」を組み合わせた構造と効果に対する経営層の理解促進と粘り強い姿勢が期待されます。

「試してみる」から「新たな価値で事業創出する」へ

井熊均・木通秀樹著『大胆予測! IoTが生み出すモノづくり市場2025』(日刊工業新聞社)

この1~2年で、IoTの概念実証を行っている企業が増えています。しかし、実証段階ではIoTの効果は測りにくいものです。IoTで成果を出している企業は、数年の年月をかけてデータを蓄積し、改善と信頼性向上を図っているからです。

IoTに対する適切な認識が得られれば、経営層が導入をリードしなければいけないこと、継続的なループを回さなければいけないことがご理解いただけると思います。こうした継続的な取り組みを行った企業にはIoTによる成果拡大が期待できるでしょう。

 
木通秀樹(きどおし・ひでき)
日本総合研究所創発戦略センター部長/シニアスペシャリスト
1964年生まれ。慶應義塾大学理工学部研究科後期博士課程修了(工学博士)。石川島播磨重工業(現 IHI)にて知能化システムの技術開発を行い、各種のロボット、プラント、機械などの制御システムを開発。2000年に日本総合研究所に入社。新市場開拓を目指した社会システム構想、および再生可能エネルギーなどの技術政策の立案などを行う。『「自動運転」ビジネス 勝利の法則』(B&Tブックス・共著)など著書多数。
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