経営者と現場責任者の共通言語が必要

では、6日間で200万円の経営塾に参加するだけで、本当に企業は変わることができるのだろうか。

「確かに、経営者の意識が変わっても、会社という組織そのものを変えるのはとても大変です。だから、経営者1人で来ないでほしい。この経営塾は、経営者の参加は必須ですが、同時にあと2人参加できます。その枠には現場のトップを連れてきてほしい。連れてこられないと成功確率が下がるよ、とまで言いたい。経営者との共通言語を現場責任者に持たせると、変革にチャレンジする土台ができる。うまくいく会社なら、講座の内容を1回2回実践するくらいで、出てきた課題にどうやって対処するのかが身につくはずです」

受講者はチームワークを高めるために必要なメソッドを講義で学び、自社に持ち込んで試し、次回の講義には課題を持ち寄る。このサイクルを繰り返す。第1期は全6回を来年1月から3月までに行う。講義時間は毎回8時間。5月からは第2期も開催する予定だ。

「1人の離職者を減らすだけで、どのくらいの損失を防げるでしょうか。それが2人3人となったら200万円は安いものだと思います」

“チームワークあふれる社会”が目標

青野社長はチームワーク経営塾の事業収支について「目標を置いていない」とした上でこう語る。

「遠いところの理想ははっきりしています。チームワークは楽しい。だからチームワークあふれる社会になるようにしていきたい。そうすると、人間の幸福度と生産性がダブルで上げられるんですよ。よくスポーツで、個人種目で優勝しても泣かなかった選手が、団体だとわっと泣き出す、という場面があるでしょう。感謝と貢献、これは人間にとって重要です。お互いの強みも生かせるので、個々人が得意なことに集中でき、生産性も上がります。1+1が2で終わらず、3にも4にもなる。こんなに良いことはないのではないでしょうか」

青野 慶久(あおの・よしひさ)
サイボウズ 代表取締役社長
1971年生まれ。大阪大学工学部卒業後、松下電工(現パナソニック)に入社。97年、サイボウズを設立し、05年より現職。3度の育児休業と短時間勤務を経験。著書に『チームのことだけ、考えた。』など。
富谷 瑠美(とみや・るみ)
記者/編集者
2006年早稲田大学法学部卒。アクセンチュア株式会社で全国紙のITコンサルティングを担当したのち、日本経済新聞電子版記者。現在はリクルートグループの編集者と、自営業で記者の二足のわらじを履く。注力分野はIT、手法としてインタビューなど。
(撮影=プレジデントオンライン編集部)
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