働き方の多様性自体は、複数の事例が世の中に出てきています。しかし、ただ真似るだけではうまくいきません。サイボウズには、100社以上で講演し、自社でも推進してきたマネジメントのノウハウがある。この経営塾では、参加者にそのノウハウを伝え、持ち帰って、実際に会社を変えてもらうことを目的にしています」
かつては離職率28%の「ブラック企業」だった
サイボウズの離職率は、2017年の時点で4%。厚生労働省の「平成28年雇用動向調査」によれば、常用労働者の離職率は平均15%だ。しかし、創業時からこのような“ホワイト企業”だったわけではない。青野社長が就任した2005年の離職率は28%超だったという。
「私自身、ずっと『ITベンチャーなんだから死ぬほど働けよ』と思っていたんです」
お金をかけて広告を出して、採用して教育する。それでもまた辞めていく。ついにその割合は、社員の4人に1人を超えた。
「はじめは『全員の給料を上げたら頑張ってくれるのか』とも思ったのですが、そうでもない。みんなに意見を聞いていたら、『(希望する働き方が)みんな違うんだ』ということに気づいたのです」
パリや妙高高原でのリモートワークも
そこで青野社長は、劇的に方針を転換。2007年からは、「ワーク重視」一辺倒だった評価制度を「ワーク重視型」「ライフ重視型」「ワークライフバランス型」の3種類からの選択型に改め、働き方の自由度を広げた。
また2012年には働く場所を選択できる「ウルトラワーク」制度も運用開始。フランス・パリや上越・妙高高原に住みながらリモートワークで働く正社員、ほとんど会社に来ない営業マンなど、多種多様な働き方が認められている。
「『働き方宣言』という制度があります。社員が『私はこんな働き方をします』と全社員に向けて公開してしまうんです。例えば『月・火はサイボウズの仕事、水は副業、金は会社に来るけども定時に帰ります』とか『週に1回は在宅で働きます』といったように。この情報共有に活躍するのがITツール、グループウェアです。『今からあの人に仕事を振っていいのか』『この時間に会議を入れていいのか』というのはツールを見ればわかります。この制度の実現は、ITがないとなかなか厳しいでしょうね。多様すぎてホワイトボードに書きようがありません」