障害者と健常者の垣根を低くする試み

障害をもって生きることは、自分の身体が思いどおりにならないという困難だけでなく、生活のあらゆる局面で健常者の社会から排除される状況に立ち向かうことでもある。

坂川裕野『亜由未が教えてくれたこと “障害を生きる”妹と家族の8800日』(NHK出版)

例えば、重い障害をもつ子供が学齢になると、特別支援学校が用意されている。重度の障害をもつ子供への対応は、専門の体制を敷いた学校でないと難しいと判断されているからだ。これは、他の子供と一緒には学べないことを意味する。成人してからも状況は変わらない。

そして、たとえつかの間排除を押しのけることができたとしても、健常者を基準に作られた社会の仕組みに沿って暮らす不便が待ち受けている。脚が不自由な人、目が見えない人、色覚障害の人、脳性まひの人、それぞれの障害にはそれぞれの困難があるが、健常者基準の社会の仕組みから阻害されるという点では、同じである。

そうした困難を抱えつつ、24年間、社会との接点を模索しながら生きてきた家族がある。

坂川亜由未さんと、その家族だ。17年9月放送のNHKスペシャル「亜由未が教えてくれたこと」では、亜由未さんの実兄であるNHKのディレクターが、自身の家族の暮らしぶりを紹介した。今回、NHK出版では、この番組を書籍化した。