改正著作権法が、蟻の一穴となるか

JASRACは、カルチャーセンターやダンス教室での演奏については使用料を徴収してきた。これらの施設における演奏は教育目的であると同時に、営利目的でもあるからだ。音楽教室にも同じロジックが当てはまりそうだが、城所氏はカルチャーセンターとの違いを力説する。

「音楽教室の生徒は将来、音楽文化を担う子どもたち。使用料徴収で教室がつぶれたり、授業料の値上げにつながれば、音楽文化の担い手がなくなる」

現在、「音楽教育を守る会」は教室での演奏に使用料を請求しないことの確認を求めてJASRACと係争中。前述のとおり旗色は悪いが、城所氏は19年1月から施行される改正著作権法に一縷の望みを託す。

「今回の法改正で『当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合』の著作物使用の許諾が必要なくなった(著作権法第30条の4)。国会での審議によれば、『専ら別目的での利用を目的として行われるのであれば、享受を目的とした行為には当たらない』とのこと。この条文によって、専らスキル習得を目的とした音楽教室での演奏も享受を目的とした演奏にあたらない可能性がある」

裁判所がどのような判断を下すのか、要注目だ。

(答えていただいた人=国際IT弁護士 城所岩生 図版作成=大橋昭一 写真=iStock.com)
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