経済ニュースの本質を見極めるにはどうすればいいか。役立つのが「会計」だ。会計ではモノの動きと時間の流れを「金額」で整理していく。それが理解できると「ウラの裏」がするすると見えてくる。雑誌「プレジデント」(2018年3月19日号)の特集「会社の数字、お金のカラクリ」から、記事の一部を紹介しよう――。

会計の発想で、論理的な判断力強化

冒頭から恐縮だが、次の問題にトライしていただきたい。

1万円のパソコンのソフトウエアを買いに、専門店へ行くとセールの時期で、お目当てのソフトウエアが40%引き。念のため向かいの家電量販店を覗くと、そこでは「ポイント50%還元セール」の真っ最中で、お目当てのソフトウエアも対象だった。では、どちらがおトクか?

もちろん、注目すべきは「40%」と「50%」という数字。しかし、単純にそれだけを比べて、「家電量販店でソフトウエアを買い、また還元されるポイントを使って5000円の記憶媒体をついで買いしよう」と判断したら間違いだ。ビジネスパーソンとして必要不可欠な、数字や会計のセンスに欠けているといわざるをえない。

公認会計士の林總さんは会計の本質について、「モノの動きと時間の流れを『金額』という数字で整理していくのが会計。そうした発想を頭のなかに常に持っていれば、ビジネスの現場や日常生活のなかで論理的に物事を判断できるようになり、数字のセンスも高まる」と語る。

その「整理」で着目するのが、自分の手元に「入るモノ」と、逆に「出ていくモノ」で、会計は「入りと出」の管理ともいえる。今回はどうなるのだろう。

専門店の場合、自分の手元に入ってくるのは、40%値引きされた6000円相当のソフトウエアで、自分の財布から出ていくのは対価の6000円。次に家電量販店の場合、前者は合計1万5000円だったものがポイント還元で1万円分になったソフトウエアと記憶媒体で、後者は1万円だ。

つまり、手元に入ってくるモノも出ていくおカネの額も違う。そのディスカウント率を比較するのなら、おのおのの元の値段と、出したおカネをベースに考える必要がある。

要注意なのが家電量販店で、「ソフトウエアと記憶媒体合わせて1万5000円のモノを、5000円値引きの1万円で買った」ということになる。するとディスカウント率は約33%にとどまる。結局、同40%の専門店で買ったほうがおトクなのだ。