経済ニュースの本質を見極めるにはどうすればいいか。役立つのが「会計」だ。会計ではモノの動きと時間の流れを「金額」で整理していく。それが理解できると「ウラの裏」がするすると見えてくる。雑誌「プレジデント」(2018年3月19日号)の特集「会社の数字、お金のカラクリ」から、記事の一部を紹介しよう。今回は「日本マクドナルドと損益分岐点」について――。
V字回復を的確に分析するツール「損益分岐点」とは
日本マクドナルドホールディングス(HD)のV字回復が急加速。2017年12月期の決算は、売上高2536億円(前期比11.9%増)、経常利益197億円(同198.03%増)と大幅な増収増益に。サラ・カサノバ社長兼CEOが現職に就いたのは14年3月。その後、期限切れ鶏肉問題などが起き、2期連続で経常赤字への転落を余儀なくされた(図1参照)。
「そんなドン底からのV字回復を的確に分析するツールの1つが『損益分岐点』で、経営者は常にその状況を意識している」と公認会計士の山田真哉さんはいう。
経費は材料費や販促費など売上高に応じて増減する「変動費」と、労務費や家賃など売り上げの増減には影響されない「固定費」に分かれる。
両者を売上高から引いたものが経常利益で、数式で示すと「売上高-変動費-固定費=経常利益」。また売上高から変動費を差し引いた利益を「限界利益」という。この限界利益が固定費を上回れば経常利益は黒字となり、その際の売上高が損益分岐点となるのだ。
同社の15年12月期の損益分岐点を分析したのが図2で、限界利益は「限界利益率=限界利益÷売上高」という右肩上がりの斜線で示される。そして固定費との交点である2271億円が損益分岐点となる。しかし、実際の売上高はそれを下回り、大幅な経常赤字に陥ったわけだ。
確かに決算短信や有価証券報告書の数字で、変動費と固定費を厳密に分けるのは難しい。しかし、肝心なのは問題点を大づかみすること。公認会計士の林總さんの「ざっくりと材料費、外注費、ロイヤルティー以外は固定費と見なせばよい」という考え方に従う。