本当に競争すべき相手は誰なのか

後にわかったのだが、新しい編集担当は派遣社員だったそうだ。おそらく、上にいる契約社員や正社員に対し、自分の有能さを見せつけたいと考えていたのだろう。そのために、自らの編集論をことあるごとに振りかざし、相手のライターがいかに無能かを白日の下にさらそうとした。まあ、この担当者の置かれた「外注よりはエライが社内での立場はもっとも低い」という状況を考えると、こうまでせざるを得なかった事情も少しは理解できるが……。

仕事熱心なのは結構だ。だが、プロジェクトをつつがなく推進し、ひとつひとつの業務をそつなく完遂していく、ということを主軸に考えれば、感じの悪いメールをわざわざ送り付ける必要はないし、関係者に「新しい担当者、うぜぇ」などと思わせるのも得策ではない。

もしかしたら、自分が外注スタッフにあきれ続けていれば、上司はそのスタッフを切ってくれるだろう。それを見て、他の外注スタッフは恐れおののき、自分の言うことを聞くようになるだろう……などと考えたのかもしれない。でも、それなりに付き合いの続いてきた外注先であれば、リカバリー不能なほどの明らかなミスでもしないかぎり、上司はいきなり切ったりしないものだ。新たに外注スタッフを探すにしても手間や時間がかかる。これまで無難にプロジェクトが進行してきたのであれば、むしろ「余計なことはするな」「まずはこれまで通りのやり方で進めろ」と担当にクギを刺すのが、バランス感覚を持った上司の姿だ。

それどころか、新しい担当者のせいでプロジェクトに関わる人が辟易とし、いつの間にかプロジェクトが停滞していた、なんてことになれば、トバされるのは新しい担当者のほうである。しかも、停滞の発端が担当者からの“感じの悪いメール”だったとしたら、上司はあまりのレベルの低さにあきれ果ててしまうことだろう。

とどのつまり、プロジェクトというものは、どこかからカネが出て、それをメンバーで山分けをする作業なのである。互いの利益のために協力し合うのが重要なのに、いちいち内部で衝突したり、失敗をあげつらったりするのは、本当にアホらしい。頓挫したプロジェクトや炎上した案件について内心でせせら笑うような姿勢は、「仲間」という観点だけでなく、社内の全体最適の観点からしてもまるで意味がない。

競争する相手はあくまでも「他社」である。そして、自分の属する組織全体が上向けば、自分の仕事だってやりやすくなるだろう。だからこそ、「身内に敵をつくる」ような愚行は厳に慎まなければならない。

【まとめ】今回の「俺がもっとも言いたいこと」
・身内をクサしたり、揚げ足取りしたりするのは、まったく無意味。結局、最終的に損をするのは自分だ。
・仕事とは、互いに協力しあって利益を出し、それを仲間で山分けする営み。競争相手は外部の「他社」であって、内部にいる仲間ではない。
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973年東京都生まれ。ネットニュース編集者/PRプランナー。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『バカざんまい』など多数。
(写真=iStock.com)
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