電話番号の記し方にも怒りが表れて

仮に「発言内容は、タイトルでも正確に記述せよ」という編集方針が新たにできたのであれば、事前にそう伝えればいいだけのこと。とはいえ、新しい編集者はとにかく高圧的なのだ。その後のメールのやり取りでも「読んでて疲れる文章です」「あなたの論文を読んでるのではありません。本論に行くのに余計な説明をいちいち入れないでください」などとキツイ調子で何度も修正を依頼してきて、挙げ句の果てにはあきれたように「メールでは話が通じないようなので電話ください」と冷たく言い放つ。明らかにイラついているので、当然、メールの書き出しからして挨拶も何もなく、いきなり「電話ください」とだけ書いて送ってきたりする。

ちなみに、新しい編集者の怒りは「電話ください」メールに記された電話番号にも表れていた。普通、電話番号をメールなどに書き記す場合、「090-xxxx-yyyy」とハイフンを2個挟むのが一般的だろう。しかし新しい編集者は「090xxxxyyyy」とハイフンなしで書いてきた。私はそれを見て、「ハイフンを入れることさえ面倒に思うほどいら立ち、怒っているのだな」と感じ取ってしまった。英語の場合、すべてを大文字で書くことにより、思いを強調するようなニュアンスを表現することができる。憤りの感情を表したいときもしかりだ。下記の英文を見てほしい。すべてを大文字で記すと、なんとなく圧が生まれて、まったく印象が変わってくる。

Do the right thing!
DO THE RIGHT THING!

上を日本語に訳すなら「正しくやってね~!」といった感じだが、下は「た・だ・し・く・や・れ!」のようなニュアンスとなる。これと同じような意味合いで、ハイフンを省くと電話番号の表記でも怒りの感情を伝え、相手を威圧することができるのか……そう思い、私は妙に感心してしまった。

仲間を威圧してもメリットはない

それにしても、相手にどのような言い回しで伝えるかは、やはり重要だ。意向や方針があるなら、普通のテンションで伝えればいい。少なくとも、あきれた風情で高圧的にやり直しを命じ、相手を威圧する必要はない。また、言い方はともかくとして、「読んでて疲れる文章」や「余計な説明をいちいち入れないで」と感じた部分はライターが書き直さなくてはいけないだろうが、前述したタイトル変更くらいは最終決裁者たる編集者がやればいいだけの話である。

編集者とライターの関係は、ライターがよほどの大御所で「先生」的な立場でもない限り、上司と部下のような、監督と役者のような関係だ。編集者は上司なのだから、細かい部分は自分の権限で修正してしまえばいい。そして、直した部分については別途「以下の点が今回の原稿で気になったので、今後、執筆いただく際は留意していただければ幸いです」などと箇条書きにでもまとめてライターへ伝えればいいのだ。

今回紹介した編集者の所業は、関係者全員が見られる環境で、いうなれば「お前の提出物はクソだ! ボケ! アホ! 無能!」とののしっているようなものだ。しかし、「このハゲー!」発言で世間を騒がせた元衆議院議員の豊田真由子氏のように「お前はどれだけ私の心を叩いている!」「これ以上、私の評判をさげるなー!」的にあきれて見せるのは、ほとんど意味がない。理由は単純で、自分も、そしてののしった相手も、同じプロジェクトに関わっている構成員だからである。自分が罵詈雑言を吐くことでプロジェクトの士気が低下したとしたら、巡り巡って不利益を被るのは自分なのだ。