おしなべて日本は追い風であるという見方が大半を占めるが、慎重論も少なくない。
大手不動産会社の元会長は「株高だとつい景気がいいように感じるが、あまり株価と実体経済とを結びつけて考えない方がいいのではないか。株高そのものにも違和感がある」と苦言を呈する。日本の株高は世界的な金余りの中で海外の機関投資家が日本株に殺到したということだけでなく、日銀とGPIFが巨額の資金を投入して株価を買い支えている側面も否定できないからだ。
さらに日銀の今後の経営にも不安が残る。日銀のバランスシートの85%はすでに国債が占めている。しかも保有する国債の9割以上が長期国債だ。政府は今インフレ政策をとっているが、一方でインフレが進めば国債は暴落し、日銀は巨額の損失を抱え込むことになる。しかし、「日銀の抱える国債の出口戦略はまだ見えてこない。しばらくは塩漬けにしておくのだろう」(大手証券会社社長)と懸念を口にする。
産業革新機構・志賀会長「もっと再編統合しなければダメ」
「表面的には景気も悪くないし、いいムードだろうと思うのですが、比較ということでいうと、世界中でイノベーション競争になっている。日本があまり足元の景気の良さに浮かれていると、苦労するのではないかと思います」
こんな警鐘を鳴らすのは昨年、東芝メモリの支援問題などで注目された産業革新機構の志賀俊之会長だ。
「いろいろなところで世界の動きをみていると、イノベーションを起こして商品や技術だけでなく、ビジネスモデルを変えていく動きがものすごく激しくなっている。いままでの常識にとらわれたビジネスをやっていていいのか。そういうことを変えなければならない時代が確実に来ているので、“ゆでガエル”ではないが、足元がよければ対応が遅れて、どうしてもゆで上がってしまう。そこが心配です」
政府も賃上げや設備投資を積極的に推し進めた企業に対しては減税をするなど企業体質の改善を後押しする取り組みを始めようとしているが、それだけでは十分ではない。
「これだけ多くの企業が一つの業界でしのぎを削っているのは特殊です。これでは世界に打って出るような原資が稼げない。もっともっと再編統合していかなければダメです」(志賀会長)
戌年は「戌笑う」というが、そんなのんきなことは言っていられない。足元の明るいうちに次の一手を打たなければならない、2018年はそんな年なのかもしれない。