1月に学校を休んでも学力が伸びない理由
中学受験のために1月に小学校を休むのは「あり」か「なし」か。中学受験専門塾を経営するわたしは声を大にして言いたい。
そんなの「なし」に決まっている。
ちょっと考えてみてほしい。学校に進学させるために、学校を休ませる。これはどう考えても矛盾しているのではないか。「義務教育」は、日本国憲法26条にて次のように定められている。「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ」。つまり、親は子を小学校に通わせなければいけない。中学受験勉強に専心させようと、小学校を休ませるのは、明らかなルール違反といえる。
もちろん、例外はあるだろう。小学校内でインフルエンザに罹患する子が続出していたり、子の体調が良くなかったり……そんなときはいつも以上に気を遣う必要があるのは言うまでもない。
他にも例外に相当するケースがある。たとえば、中学受験に挑む子が少ない学校では、入試直前に慌ただしくしている中学受験生が異質な目で見られ、いじめに発展したなんてことがあった。また別の小学校では、中学受験に理解を示さないクラス担任が入試直前にわざと膨大な宿題を出すなんて話を聞いたことがある。こんなふうに小学校へ通うことが子の精神上マイナスになってしまうのならば、小学校を休むという選択をするのは仕方がない。
▼心を高く「飛翔」させないと合格には届かない
しかしながら、あえて小学校を休んでまで受験勉強をすることはやめてほしい。いままでのわたしの経験上、小学校を休んだその時間を受験勉強に充て、「他人に差をつけたはず」の子が、中学受験で良い結果を残すことはあまりないのだ。
子が中学受験で志望校の合格を果たすためには、緊張感漂う試験会場の中で、次から次へと登場する難問をひとりで解決しなくてはいけない。そこでは、子どもが持つ本来の学力を最大限に引き出すだけの「高揚感」が不可欠だ。「高揚感」を抱く――。少し奇異な表現に感じられるかもしれないが、換言すると心を高く「飛翔させる」状態である。
その「飛翔」の原動力は、心のバネ(弾性)だ。バネが大きければ大きいほど、子は高く跳ぶことができる。ならば、この子どもの心のバネはどう育つのか。これは、簡単には育たない。日ごろの生活で体験する、良いこと悪いこと、うれしいことつらいこと、達成したこと悔しいこと。その「プラス」と「マイナス」の両面を経ることで、子どもの心のバネの力は少しずつ増していく。またマイナスをプラスに転じるような、「なにくそ」という自助努力をしたかどうかもバネの力の大きさに影響するだろう。