2月はじめにピークをむかえる中学受験。入試直前の1月には、小学校を休ませて、受験勉強に専念させようとする親もいる。そうした「需要」を嗅ぎ取り、1月平日の午前中に有料講座を設ける塾もあるという。だが、「1月に学校を休んだ子ほど、結果的に不合格になっている」と中学受験専門塾を経営する矢野耕平氏は語る。なぜなのだろうか――。

中学受験直前 小学校から6年生が消える「怪奇現象」

「先生、これだけ学校に『同級生』がいないと、何だか子を普通に通わせているこっちが特殊な家庭ではないかと不安になっちゃいます……」
以前、6年生の子を持つ母親よりこんな電話を頂戴した。

*写真はイメージです(写真=iStock.com/Milatas)

毎年1月、中学受験をする生徒の割合が高い小学校では、6年生を見かけなくなるという「怪奇現象」が発生する。その理由は、病気でも体調不良でもない。「家で受験勉強に専念させる」ということだ。

願書とともに中学校へ提出する小学校作成の調査書は、12月中に作成するため、1月の小学校の出欠状況は一切反映されない。だから、入試直前の1月は小学校を休ませても、志望する中学校にバレる恐れはない。それなら、学校を休ませて、受験勉強に集中したほうが有利なはずだ……。そう考える親が多いのだろう。

▼1月の平日午前を「ビジネスチャンス」とみる塾もある

そして、このタイミングをビジネスチャンスととらえる「商魂たくましい」塾もある。わたしは毎年のように、1月の平日午前にある個別指導塾へ小学生が次々と吸い込まれる姿を見かけている。

過去にこの個別指導塾に勤めた経験のある男性は言う。

「表向きは小学校を休ませて塾通いをさせてはいけないことになっていますよ。でも、『お客さまのご希望に応じる』なんていうエクスキューズを付けて、1月は午前中に塾を開放して有料講座をおこなっている校舎もある。ただ、どう考えても『子のため』にやっているのではなく、校舎長が売り上げノルマを達成するための『好機』としてやっているとしか思えないんですけどねえ……」