まずは、幸楽苑HDとハイデイ日高の利益率と経費率を比較検証してみたい。数値は12~16年度の平均値を用いることにする。

経費率のひとつである売上原価率(売上高に占める売上原価の割合)は、幸楽苑HDが26.8%で、ハイデイ日高が27.3%。両社の差はほとんどない。これは大まかに言うと、ラーメンなど商品自体の経費(食材費など)の割合には大きな差がないことを意味する。

では、利益率のひとつである売上高営業利益率(本業の儲けを示す営業利益が売上高に占める割合)はどうだろうか。幸楽苑HDがわずか1.8%であるのに対して、ハイデイ日高は11.9%もあり、10ポイント以上も差が開いている。

日高屋VS幸楽苑は前者の圧勝

なぜ営業利益率に大きな差が生じているのか。答えは、経費率のひとつである売上高販管費率にある。ハイデイ日高が60.8%であるのに対し、幸楽苑HDは71.4%で10ポイント以上も高い。販管費率の差が、そのまま営業利益率の差となっているのだ。

軽く酒を飲むのにも使える駅前の日高屋(編集部撮影)

販管費の中で大きな割合を占めるのが人件費と地代家賃だ。幸楽苑HDは、この2つの点で効率化や有効活用ができていないと考えられる。人件費に関しては、無駄な人員配置が多かったり、作業自体に無駄が多かったりする可能性がある。

地代家賃はどうだろうか。幸楽苑は全国に約560店を展開しているが、その大半は郊外のロードサイドにある。このため幸楽苑は4人席など複数人が利用できるテーブル席の割合が高い。一方、同じラーメン店である日高屋は、駅前繁華街を中心に立地し、カウンター席の割合が高い。

幸楽苑では、4人席を1人だけで利用するといった状態が起きやすく、席に遊休(利用されず放置してあること)が生じやすい。また、家族客など複数人で来店する客は1人客に比べ長居になりがちだ。そうなると客の回転スピードが遅くなり、効率は落ちる。結果として、売り上げに貢献しないスペースの割合が高くなってしまい、地代家賃が無駄に膨れ上がることになってしまうというわけだ。

地代家賃は固定化された建物や土地などが関係するため、すぐに効率化を図るのは難しい。一方で、多くの客を呼び込み、売上高を十分に確保できるのであれば、地代家賃の比率は抑えることができる。2013年度以前は売上高が増加していたので販管費率は抑えられ、5~7%程度の営業利益率をたたき出していた。しかし、13年度以降は売上高の成長が止まり、販管費率が上がったため、営業利益率が低下してしまったのだ。