次に、ペッパーフードサービスの収益構造を見ていきたい。同社は複数の業態を展開しているが、幸楽苑HDがFC展開する「いきなり!ステーキ」の収益構造を確認するのがここでは妥当だろう。

「いきなり!ステーキ」は利益率が高いビジネスモデルだ。原価率は、ステーキやライス、サラダ、アルコールなどを含めて60%程度とみられ、他の飲食店と比べてその割合は高いが(一般的な飲食店の原価率は30%程度)、販管費率が低いため利益率は高い。14~16年度平均の営業利益率は6.4%にもなる。

「いきなり!ステーキ」は立ち食い形式のため、長居する客が少なく客の回転がはやい。また1人客も多く、席の遊休が少ない。狭い敷地に25~35席程度しか設けていない店舗が多いが、それでも十分に高い収益を上げることができる。

狭くてもやっていけるということは、地代家賃が高い駅前での出店が可能になるということでもある。収益を上げれば地代家賃を含む販管費率が下がり、高い利益率を確保することができる。

こういった視点で考えると、立ち食いか否かという違いはあれど、「いきなり!ステーキ」と日高屋のビジネスモデルはよく似ている。両者はともに、客の回転を早くすることで収益を確保しているわけだ。

「いきなり!ステーキ」は郊外でも好調

「いきなり!ステーキ」の勢いはとどまるところを知らない。18年度には、200店の新規出店を計画している。結果、18年度末には店舗数が387店にもなるという。これまでは駅前を中心に出店し人気を博してきたが、今年5月末から出店を開始した郊外ロードサイド店も人気で好調だという。「いきなり!ステーキ」であれば、前述の通り、いま苦戦を強いられやすい郊外型店舗でも、席の遊休は生じにくいだろう。今後は郊外ロードサイドでも出店を加速していくものとみられる。

幸楽苑HDも勢いに乗る「いきなり!ステーキ」をFC展開することで、低迷している業績を上向かせたい考えだ。

ただ、本業はあくまで幸楽苑であって、既存の幸楽苑の店舗を立て直さないことには抜本的な解決にはならない。メニューの強化はもちろん、現実に即した内装への変更や、店舗運営の効率化など、あらためて厳しい目線で精査する必要があるだろう。

佐藤昌司(さとう・まさし)
店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒業。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。店舗型ビジネスの専門家として、集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供している。
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