幸楽苑HDの売上高が低迷するようになった理由はいくつかある。

そもそも、ラーメン店は複数人で来店する客よりも1人客になじみやすい業態だ。カウンター席が数席しかない個人経営のラーメン店でも繁盛しているところが多いのもこのためだ。1人で黙々と食べることができるのは、ラーメン店の魅力のひとつといえる。

ラーメン店は、ファミレスよりは牛丼店に近い。牛丼店は1人客が多く、席の遊休が他業態と比べて少ない。また、黙々と食べて帰る客が多いため回転が速く、収益を確保しやすい。本来、ラーメン店が目指すべきは牛丼店のような形態だったはずなのだ。

幸楽苑は4人席が多く、家族客など複数人で来店する客を多く取り込む必要がある。当初はその路線が功を奏して業績を伸ばしてきたが、今や頭打ちになったと考えるのが順当だろう。

家族客狙いの郊外型店舗に吹く逆風

家族客狙いの方向性が困難になってきた理由のひとつとしては、単身世帯や共働き夫婦が増加し、人々の都心回帰が進んでいることがあげられる。このため郊外ロードサイドで十分な収益をあげられる立地が少なくなり、出店余地がなくなってきたことから、郊外型店舗は厳しい状況に置かれつつある。

また、飲酒運転に対する世間の目が厳しくなり、郊外ロードサイド店でのアルコール販売が難しくなっていることも影響しているだろう。これらは幸楽苑にとって向かい風といえる。実際、幸楽苑と似た店舗展開を行っていた「長崎ちゃんぽんリンガーハット」は、業績が落ち込んでいた09年2月期に、郊外ロードサイドを中心とした不採算店舗50店舗を閉鎖している。その後、大型ショッピングセンターや駅前への集中出店を行うことで収益の改善に成功した。

幸楽苑に特有の問題もある。16年10月に発覚した異物混入問題だ。店舗で提供した商品の中に、誤って切断してしまった幸楽苑従業員の指が混入してしまった事件が大きく報じられた。この1件も、客離れの重大な原因になっているだろう。

こうした理由が積み重なり、幸楽苑HDの業績は低迷していった。