トランプは中国が恐い?
読売社説は続けてこう書く。
「独善的な『強国』路線を歩む中国を牽制する狙いがあるのは間違いない」
なるほど。中国は国際社会を侮っている。その証拠に南シナ海に軍事基地を次々と作っている。巨大経済圏構想の「一帯一路」を振りかざしながら中国の“花園”作りに懸命だ。
米国第一主義によって多国間の連携に否定的なトランプ氏がなぜ、安倍首相の戦略に乗ったのか。中国に対する強い危機感があるからだ。
2国間では中国への圧力にはならない
次に読売社説は「気がかりなのは、トランプ氏が2国間の貿易協定に固執する姿勢を改めて強調したことだ」と指摘する。
今回はオバマ前政権のアジア重視のリバランス(再均衡)政策が、TPPを推進したのとは違う。リバランスは安全保障面では米国と日韓の同盟強化、そして経済面ではTPPをベースに中国に対し、「ルールに基づく行動」を促す目的があった。
読売社説は「2国間の貿易協定では、中国に圧力を加える効果は期待できまい」と強調し、「TPPは地域の自由貿易体制を主導する枠組みであり、米国の消費者の利益にもなる」と書く。
この読売社説は納得できる。
トランプ氏は自由で開かれたインド太平洋戦略に共鳴するのであれば、多国間で協力するTPPに参加すべきなのである。そうすれば、アジアの国々といっしょになって中国を牽制できる。
朝日は「日本が米国を説き続けろ」と主張
他の新聞社説もTPPに賛成し、不参加の米国やトランプ氏を問題視する。
12日付の朝日新聞の社説のテーマはなんと「米抜きTPP」。その見出しは「『多国間』を粘り強く」である。
「米国の離脱に揺さぶられたTPPは、漂流という最悪の事態を何とか避けられそうだ。米以外の参加11カ国の閣僚会合が開かれ、新たな協定について大筋で合意した」
冒頭でこう書き、中盤ではトランプ氏の問題を取り上げ、朝日新聞としての主張を展開していく。
「問題は、米国をどうやって呼び戻すかだ。『米国第一』を掲げ、自国の利益を反映させやすい2国間協議を重視するトランプ大統領の姿勢はなかなか変わりそうにない」
「いずれ、日本にも一対一の交渉を求めてくるだろう。しかし2国間の協定では、ヒトやモノ、カネ、情報が活発に行き交うグローバル化に十分に対応できない。電子商取引などの新たなルールを広げるためにも、多国間の枠組みが理にかなっているし、米国の利益にもなる。そう説き続けることは、日本の役割である」
こうした朝日の主張には沙鴎一歩も同意する。