がんリスクが指摘される理由

このような議論になる理由の一つに「インスリン様生長因子1(IGF-1)」というホルモンの存在があります。これは細胞の成長や分裂を促進し、細胞死を抑制するので、健康維持や成長のために不可欠なもの。ところが過剰摂取すると、異常な細胞増殖が起こる、すなわちがん化につながると考えられるからです。

米国では、日本では使用禁止とされている遺伝子組み換え牛成長ホルモンの問題もあります。

米国の牛の5頭に1頭がこのホルモンを投与されているといわれており、投与された牛の乳にはIGF-1が非常に高レベルで含まれているのです。その牛乳を飲むと、人の血液中のIGF-1が高くなるのではないかと懸念されているわけです。

結局のところ、牛乳を1日に何杯飲むのが健康にいいのかという質問に対して、その答えは専門家でも意見が分かれるのが現状です。一般的には、1日あたりコップ1杯から2杯が適量だと思います。

 
大西睦子
内科医師・医学博士。東京女子医科大卒業。国立がんセンター、東京大学を経て、2007年から13年まで、米国ハーバード大学リサーチフェローとして、肥満や老化などに関する研究に従事。ハーバード大学学部長賞を2度受賞。著書に『健康でいたければ「それ」は食べるな』『カロリーゼロにだまされるな』など。
(構成=小澤啓司)
関連記事
「ハム、ソーセージ」のがんリスクは最大クラス?
控えめ推奨の「塩」は摂取量ゼロまで近づけるべき?
「ロカボ=緩やかな糖質制限」は万病に効く
「卵」を毎日2個食べると不健康なのか?
健康寿命 延びる冷や奴・縮む冷や奴