11月14日は、WHO(世界保健機関)が制定した「世界糖尿病デー」。世界の成人の糖尿病人口は約4億1500万人。日本はといえば、総人口の1割を超える約2050万人の糖尿病患者および予備群がいるといわれている。
このような中、北里研究所病院・糖尿病センター長(一般社団法人 食・楽・健康協会代表理事)の山田悟先生がすすめる糖質制限食「ロカボ」が、いま注目を集めている。
ロカボと聞いて、「あ、知ってる!」と思う読者も多いだろう。たとえば、イオンは今年5月の381店舗を皮切りにロカボ食品コーナーを展開。食品メーカーからもロカボを冠した商品が相次いで発売されている。
ロカボとは何か? なぜ「糖質ゼロ」ではないのか?
ここで「ロカボ」とはどのような食事法なのか整理しよう。
ロカボは糖質制限食の一つで、目的は食後の血糖値を上げないようにすること。血糖値の上昇を防ぐためには、食事からの糖質摂取を適正にすることが一番の近道だ。ロカボの糖質摂取量は、朝昼夜の1食ごとに20~40g。加えて間食(おやつ)として1日に10gの糖質を摂ることができる。
この糖質量は平均的な日本人の糖質摂取量の半分ほどにあたる。1食当たりでご飯ならお茶碗半膳、食パンは6枚切りを1枚、麺類は半玉食べる程度に糖質を控えることになる。その代わりに血糖値を上げる恐れがないタンパク質や脂質、つまり肉・魚や油脂は気にせず満腹になるまで食べてもいいのが、ロカボの食べ方だ。
ここで注目してほしいのが、1食ごとの「20~40g」という糖質量。とくに20gという下限量を決めていることが、ロカボの特徴だ。糖質制限食にはいろいろあり、糖質をまったく摂らない厳しい制限もある。摂取する糖質が少なければ少ないほど効果が出そうなものだが、なぜ下限を設けているのか。この点を山田悟先生に説明していただく。
「糖質摂取をゼロにしない理由は複数あります。私は臨床医として毎日多くの患者さんに接している経験から、『続ける』ことの大切さを痛感しているのです。確かに難病のてんかんの患者さんには極端な糖質制限食が必要な方もいるのですが、長期にわたるデータをみると、ストイックな制限食はほとんどの人がその後にギブアップしてリバウンドしています。また、そもそも減量効果を比較した研究では、厳しい糖質制限は、緩やかな糖質制限と同じレベルの効果しか得られず、悪玉コレステロールが上がってしまっていたのです。効果が同じで、楽にできて、有害作用もないなら、そのほうがいいですよね。
しかも、血糖値というものは、日頃がんばって低い数値をキープしていたとしても、たまにハメをはずして糖質のドカ食いをして血糖値がハネ上がるのが最悪のパターン。血糖値の大きな変動が血管を傷つけるため、一番よくないのです。
また、1食の糖質の下限量20gとは、一部の糖質の多い食材の量を減らすだけでいい範囲の制限です。つまり、ふつうの食事と変わりない料理が食べられます。1食あたりの糖質量を20gよりも少なくすると、たとえば野菜でさえも糖質を含んでいるのでほとんど食べられなくなり、ビタミンや食物繊維はサプリで摂らなければならなくなります。こうなるとおいしい食事が楽しめませんし、長期的にみてメンタルにはよくないと私は考えています」