栄養が体も心も左右するから、選ぶべき食材を知る

体や心の不調をきたす血糖値の急激な変化を抑えるには、どのような食べ物を選択すればよいのだろう。

「食べた物は消化されて栄養素に分解されます。消化吸収は早いほうがよさそうなイメージですが、それは本来、我々が持っている機能を正しく使わずに、ショートカットしているということです。消化吸収は緩やかなほうが、体には自然でいいことなのです」(新宿溝口クリニック 溝口徹医師)

同じ糖質でも、砂糖のような分子量の小さい精製されたものよりも、多糖類のでんぷんから摂ったほうが、血糖値はゆっくりと上がる。しかし、現代の食生活は全くの逆。玄米よりも精白米、全粒粉でつくったパンよりも白いパン。精製された食品に偏っている。その結果、消化吸収のスピードが速く、血糖値も急激に上がりがちだ。

血糖値の上がり方のスピードがわかる指数に「GI(グリセミック・インデックス)値」がある。数値はブドウ糖摂取時の血糖値上昇率を100とした場合のそれぞれの食品の数値で、血糖値を上げるスピードの速いものほど数値が高い。

「このGI値を食品を選択するときの目安にすると、食生活は大きく変わります。血糖値をゆっくり上げ、インスリンをほどよく分泌させ、神経伝達物質となるアミノ酸を適度な比率で脳に送り込む。先に挙げた症状(http://president.jp/articles/-/20556)の改善にも繋がります」

口にすることが多い代表的な炭水化物を比べてみた。

「炭水化物の場合、GI値が70以下を選択基準にするといいでしょう。例えば、うどんにお稲荷さんを添えてというのは、お勧めできません。実際、香川県の糖尿病患者の割合は高いのですが、こういった食生活と関係があるのかもしれません」

そして、たんぱく質を意識的に摂ることも大切だと溝口先生は言う。

「骨も筋肉も、ホルモンや脳の神経伝達物質もたんぱく質でできています。そして細胞は常に破壊されては、新しくつくり直されているので、たんぱく質の摂取量が減ると、体の材料不足を引き起こしてしまいます。脂質や糖質と違って、たんぱく質は貯蓄ができませんから、昨日食べたからいいやではなく、常に補充することを意識してください」

ちなみに肉類のGI値は45~49、魚介類は40前後。調理法で血糖値も変わる。焼き鳥ならば、砂糖を使うタレよりも塩のほうがお勧めだ。

ただし、GI値は目安。重要なのはあくまで糖質の量を減らすことだ。

溝口徹
国立循環器病センターなどを経て、2003年日本初の栄養療法専門クリニックとなる新宿溝口クリニックを開設。栄養学的アプローチで、精神疾患のほか多くの疾患の治療にあたる。著書に『「疲れ」がとれないのは糖質が原因だった』ほか多数。
(奈良岡 忠=撮影)
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