ロカボなら満腹まで食べても太らないのはなぜか?

ここで問題を出そう。糖質を控えた食事をした場合、さらにタンパク質や脂質も控えるべきなのか、もしくはタンパク質や脂質は摂ってもいいのか。さてどちらだろうか?

答えは後者、いや「タンパク質や脂質は摂るべきだ」だ。

「むしろ、タンパク質や脂質は積極的に摂るべきが正解です。糖質を控えると、体が必要とするエネルギーが不足するので、その分を補わないといわゆる低栄養の状態になり、これはよくありません。やはり体にとって適正なカロリーは摂らないといけないのです。この適正量は人それぞれによって違い、カロリー計算では出せないもの。一番いいのは、満腹中枢にゆだねることです。

こう言うとみなさん驚かれますが、健康な人は満腹中枢が働き、満腹になるとそれ以上は食べられません。満腹になること、それがその人の適正カロリーに達したサインだと思ってください。満腹になったら太ると思い込んでいる人が多いと思いますが、糖質を控えている限り、満腹になるまで食べて構いません。それで太ることはありませんし、病気になることもありません」(山田先生)

科学的に説明すると、タンパク質と脂質をしっかり摂ると、満腹感を維持するためのペプチドYYが長く分泌され、空腹感を促すグレリンが長く抑えこまれるので、糖質主体の食事と違って、満腹になりやすく、お腹がすきにくくなるのだ。さらに、タンパク質と脂質を摂取するとエネルギー消費が高まるという効果も知られている。糖質を控え、その分、タンパク質と脂質を積極的に摂るのは素晴らしい食事法なのである。ただし、くれぐれも「糖質を控える」という前提をお忘れなく、だ。

ロカボで脳は働くのか?ぼーっとしてしまわないのか?

糖質制限食に批判的な意見に対してもう一つ、山田先生に答えてもらおう。それは糖質を控えて砂糖を摂らないと、脳に十分なエネルギーが供給されず、集中力がなくなったり、頭がボーッとするのではないかという疑問だ。

「それはまったくありえないことです。脳と赤血球が使うブドウ糖の量は1日約130gですが、肝臓は1日に150gの糖をつくります。つまり砂糖をはじめとする糖質を外からまったく摂取しなくても、体内の生成で十分に足りているわけです。アメリカやヨーロッパのガイドラインには、理論的には食事から糖質を摂る必要はないとさえ明記されています。私も甘いお菓子は大好きですし、ロカボは1日に間食として10gの糖質を摂れるので砂糖の価値を全否定しているわけではありません。あくまでも純粋に栄養的に考えた場合には、砂糖を摂らないことを懸念する必要はないということなのです」(山田先生)