目の前にある食べ物や飲み物は、はたして体にいいのか、悪いのか。ボストン在住の医師・大西睦子先生がハーバード大学での研究や欧米の最新論文などの根拠に基づき“食の神話”を大検証します。今回は「卵」。コレステロールの摂取制限は1日300mg以下。1個あたり約200mgを含む卵は2個で制限値を超えます。毎日2個食べ続けると、健康に悪影響はあるのでしょうか――

「完全栄養食」のはずだが……

2015年2月、米国ではアメリカ人のための食生活ガイドライン草案で「コレステロールの摂取を制限する必要はない」と明示されました。同年4月には日本でも、厚労省「日本人の食事摂取基準」において上限目標が撤廃されたのです。

これまで、コレステロールを多く含む食品の代表例として取り上げられることが多かったのが鶏卵。タンパク質、脂質、炭水化物、さらには豊富なビタミン、ミネラルを含むことから「完全栄養食」と持ち上げられることがある一方で、悪者扱いされることもしばしばありました。

そもそも、なぜコレステロールが体に悪いのでしょうか。

じつは、血液中のコレステロールが増えると、血管の壁に付着して動脈硬化を引き起こし、脳卒中や虚血性心疾患などの原因になるからなのです。

コレステロールの制限が推奨され始めたのは、米国では1960年代から。80年代には、コレステロールの摂取量目標が1日300mg以下に設定されました。

鶏卵は1個あたり約200mgのコレステロールを含みます。つまり、2個食べればそれだけで制限値を大きく超えてしまいます。ほかの食べ物からの摂取量を考えると、1個でも食べるのがためらわれる基準です。