京セラ稲盛和夫氏のアメーバ経営

【山崎】何か新しいサービスを生み出した会社の社長というのはメディアにも注目されますが、マネジメントに長けた代表取締役という観点で取り上げられる機会というのは少なく、イメージがなかなか持てない一因になっているかも知れませんね。僕自身は(若い頃DDIにいたので)京セラの稲盛さんのアメーバ経営を学んだ部分というのは大きかったです。稲盛さんの考え方はちょっと泥臭いなどと評されることもありますが、IT系・外資系の人たちに話す際にも、共通の価値観として理解してもらえる部分はとても多いです。

【丹羽】そうですね。ぜひ「京セラフィロソフィ」(http://www.kyocera.co.jp/inamori/philosophy/)のようなポリシーを社内に浸透させていきたいところです。社内でそのイメージを見せる、共有するという仕掛けを意識して作っていく必要がありますね。スピリットが薄まってしまっているということでしたが、マネジメントに関する考え方、仕組み無しにうまく回る時期は過ぎてしまっていますし、外から何かを、それこそアメーバ経営そのものを借りてればうまく行く、という時期も過ぎているのだと思います。ですから山崎さんの考え、山崎さんらしさを組込んでいってよく、そこに稲森イズム「的」なものを取捨選択し、取り入れるというのも一つの方法ですね。まずはこの半年~1年くらいで、何をしていきたいですか?

【山崎】僕自身、どういう方向に会社、事業を持っていきたいかというのを、明確にしたいと思います。それを、僕自身の言葉から、各事業部のマネジメントの皆さんが、さらに自分たちの言葉として表現し、チームに伝えていってもらう、という作業を出発点にしたいと思いました。それだけで1年くらい掛かってしまいそうですね。その流れが定着できれば、新しい取り組みを進めたときも、同じように僕の言葉を翻訳して浸透を図るという動きをとってもらえるのではないかと。創業の理念そのものを皆忘れているわけではありませんが、翻訳の力が弱まっているから、新しい取り組みが生まれるほど、創業の理念を解釈することが疎かになり、結果として組織における経営の理念の存在感が薄まっていってしまっているのだ――という風に理解をしました。「伝える」という仕事を順を追って進めていく、というイメージですね。

【丹羽】素晴らしい。今日お話を始めたときに比べて、力強い言葉を頂けましたね。宗教学でも、「内面化=翻訳と体現」といったことが重視されますが、経営のスピリットも、社長から直接聞くだけでなく、人づてに聞いたり、取引先から聞く、さらには自分がそれを人に伝えるといった幾つものプロセスを通じて、血肉となると言われます。最後に、その1年の取り組みが上手く行った後、もう少し先に山崎さんが実現したいこととはなんですか?

【山崎】スピリットを伝える、という企業文化が根づいたら、いろいろなことを任せ始めるのだと思います。僕は会社というのは環境だと思っていますが、任せられる環境作りを進めたいと思います。いまはその入れ物を作っても、そこに入れる、入りたいと言ってくれる人が少ないのが課題ですが。任せて自立するという体験を積む人を増やしていきたいですね。今日お話ししたことで、頭の整理がつき、イメージを持つことができました。ありがとうございました。

エグゼクティブコーチ 丹羽真理(Ideal Leaders株式会社 CHO)
国際基督教大学卒業、英国サセックス大学大学院修了後、野村総合研究所に入社。エグゼクティブコーチングと戦略コンサルティングを融合した新規事業IDELEAに参画。2015年4月、人と社会を大切にする会社を増やすために、コンサルティング会社、Ideal Leaders株式会社を設立し、CHO (Chief Happiness Officer) に就任。上場企業の役員・ビジネスリーダーをクライアントとしたエグゼクティブコーチングの実績多数。社員のハピネス向上をミッションとするリーダー「CHO」を日本で広めることを目標としている。
(まつもとあつし=構成)
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