デジタル化において目指す姿を具現化する責任をもつ役員である最高デジタル責任者(CDO、Chief Digital Officer)が注目されている。Strategy&のCDOサーベイでは2015年のCDOをおいている企業は調査対象企業全体の6%から、2016年には19%に飛躍的に拡大したことを確認できた。日本でも今回調査では7%の企業にまで広がっている。日本企業におけるCDOの役割について考えてみよう。(第2回/全3回)
デジタル変革で経営が果たすべき役割
デジタル化への変革が本格化する中、今後数年の間にますますCDOを置く企業が増加するものと思われる。では、何故そのような動きが広がっているか、CDOが担うべきデジタル化における経営の大きな役割をいくつか見てみる。
(1)社会経営課題の解決という目的の提示
デジタル化を推進しようとしている企業から、数多くのことをやったが、大きな取り組みに連ならないという声をよく聞く。
デジタル化において「手段の目的化」は起こりやすい。本来は課題解決という「目的」があって、その「手段」としてデジタル化を行うはずなのであるが、○○というデジタル技術を導入することが「目的」になってしまい、本来的な目的が忘れ去られてしまうのである。多様で新しい技術やアプローチが日々提供され続ける一方、解決すべき課題が明確でなければ振り回され続けてしまう。数多く打席にたつことも必要であるが、打席にたっても全ての球をむやみに打つのではなく、打ちたい球筋はおおむね決めておきたい。
では、どのレベルの「目的」を掲げるべきか。コストや効率面の改善を目指すのであれば、社内的な経営課題の解決を「目的」とすることになる。売り上げの拡大を目指すのであれば、顧客の抱えている課題(「困りごと」)を解決してその対価を得ることが「目的」になる。社会的な課題(例えば労働人口の減少に伴う人手不足、熟練世代の退職によるノウハウの消失、共働き主婦の離職防止・復職支援など)を解決してその対価を得るということも「目的」として設定可能である。解決を目指す課題は大きければ大きいほど、リターンも大きい。
デジタルにより解決しうる課題を特定し、自社の将来の提供価値や何故その価値が顧客や消費者に受け入れられるのかを明確にし、そのために構築をめざすケイパビリティ、儲けの型を明示するのは、経営の役割である。これは、経営の関与が明確でない場合には組織の理解も得られずに取り組みは結局進まない。