管理職とはどういう仕事なのかのイメージがない

【山崎】先にそういった土壌作りを進めないといけないですね。そして、新しく入って来た人たちは、そういうプロセスを経るんだ、そうすることで、良い効果が生まれているんだ、ということを周囲にも認識してもらう。

【丹羽】入社したときには、広い道が目の前に拡がっているように感じてみな一人前になろうとがんばる。しばらく経つと、それが細くなっているように見えて、だんだんと閉塞感を感じてしまう。メンターが存在するなど、組織として視野を広げるような仕組みを備えておくと、山崎さんの悩みはかなり解消されるはずです。

【山崎】全て揃えようとすると時間は掛かりそうですね。

【丹羽】5~6年は掛かると思います。専門スキルを磨けば良いんだ、と思っていたところに、そうではなく、こういう道を歩んでください、という価値を定着させるためには。そういったキャリアチェンジは当人にとっては転職するくらいのインパクトがある話ですから。そこには楽しさ、面白さもあるんだ、という醍醐味を意識して伝え続けることも必要です。

【山崎】私自身のことを振り返っても、部長くらいまではサービスに紐付いたミッションをこなしていく、ということを続けてきましたから、何をクリアすれば良いのか、というイメージはつきやすかったと思います。でも、その上の取締役などの経営層と会話するようになって、どうやってスキルを身につければいいのか想像がつかず悩んだことを思い出します。逆に言えば、色々と想像ができるようになれば……。大企業と違って、そのポジションは目の前に現実的にあるわけですからね。そこを目指して自分で事業を生み出すぞ、という位になってほしいというのはあります。そうしないと会社としても大きな成長はありませんから。

【丹羽】なるほど、ただそれはここまで話してきた内容よりももう一段上の「応用問題」ではありますね。まずは本部長=チームの育成やマネジメントを専門スキルとするポジションを目指す人が生まれてくると言うのが第一歩ですね。ただ仰ることはその通りで、そういう人が数人生まれるだけで会社の雰囲気はガラリと変わります。山崎さんが、そういうイメージを持てたのはいつ頃なんですか?

【山崎】まだイメージできていないと思います、今も手探り状態です(笑)。

【丹羽】実際、上場企業でも本来の仕事が完璧にこなせている取締役は少ない、と言われていますから。執行役員としては素晴らしい活躍をされている人は多いのですが。執行役兼取締役という不思議なポジションを経た上で、突然社長を任される。そこで初めて、取締役っぽくなるという(笑)。そこは日本全体の課題と言えるかも知れませんが。そこが解決できれば――つまり、御社で5年間キャリアを積んだ技術者の多くが、マネジメントに関心を持つ組織作りができれば、色々な企業のお手本にさえなると思います。そういう観点では先ほどお話ししたように、本部長を目指す人が出てくる、ということと同時に、取締役を目指す本部長が増えるということも進めた方が良いと思いますね。そのために社長の「カバン持ち」を制度化する取り組みなども一例です。