花粉症対策苗木への転換を推進する政府

林野庁が発表した「平成28年(2016年)版 森林・林業白書 参考資料」によると、日本の国土面積3779万ヘクタールの約7割(2508万ヘクタール)が森林だという。そのうち、人工林は全体でおよそ1029万ヘクタール、スギ人工林は443万ヘクタールを占めている(数字はすべて平成24年〈2012年〉3月31日現在)。森林全体のおよそ18%、人工林のおよそ43%はスギ林というわけだ。

先に述べたように、国も花粉症対策を喫緊の課題としてとらえ、スギ人工林を広葉樹林や針葉樹・広葉樹の混交林へと更新するべく、スギの抜き伐りを進めている。そして、新たにスギの苗木を植える際には、少花粉、無花粉の特徴を備えた花粉症対策苗木を用いるよう、林業現場での転換を推進している。

すぎの花粉症対策苗木。

林野庁の「平成29年(2017年)度予算概算要求の概要」には、「花粉発生源対策の推進」の項目で、5億4700万円の予算を割くことが示されている。これは2016年度の4億200万円と比べて、1億4500万円の増額となる数字だ。対策の大きな柱となるのは、花粉症対策苗木。「政策目標」として、スギの花粉症対策苗木の供給量を2014年度の258万本から2017年度中に1000万本へと大幅に増加させることを謳っている。

現状、スギ苗木の年間供給量は全体でおよそ1600万株。そのなかで、花粉症対策苗木は15%程度にとどまっている。「スギの花粉症対策苗木の供給量は平成17年度の9万本から平成26年度には258万本と約30倍に増加」と前出の「概要」で説明されているように、国も供給量の増加に取り組んできたことは理解できる。ただ、2017年度でスギ苗木の3分の2を花粉症対策苗木へと急激に置き換えることが果たして可能なのか、若干の疑問が残る。いずれにせよ、現状においては、まだまだ花粉症対策苗木は足りていないと言わざるを得ない。